唾液腺のアクアポリン5(AQP5)は唾液分泌に重要な水チャネルである。申請者はAQP5がcAMPシグナル下流で一過的にリン酸化されること、Ca2+シグナル下流で一過的に短鎖ユビキチン(Ub)化されることを見出しており、本研究ではこれら可逆的なAQP5翻訳後修飾の唾液分泌過程における役割を調べている。<リン酸化>平成23年度においてマウス唾液腺において、cAMPシグナル下流でAQP5の259番目スレオニンが素早く一過的に細胞膜上でリン酸化されることを学術誌に報告し、このリン酸化は唾液タンパク質分泌過程に関与するがAQP5細胞内輸送トリガーである可能性は低いことを示した。<短鎖Ub化>これまでの研究でAQP5の短鎖Ub化は小胞体ではなく主に細胞膜上で起こること、プロテアソーム分解には関与しないことなどの、最も想定されるエンドサイトーシスやライソソーム分解への関与を示す傍証を得ている。平成24年度は主に短鎖Ub化の役割を明らかにする目的で解析を進めた。AQP5短鎖Ub化のエンドサイトーシスへの関与を直接調べるため、正常あるいは非Ub化AQP5の細胞外領域にタグ配列を挿入し安定発現させた培養細胞を作製し、抗タグ抗体を指標としたAQP5細胞内取り込み解析を行った。この解析法でAQP5の時間依存的な構成性の取り込みと減少が示唆されたものの、Ub化依存的な調節性の取り込みは確認できなかった。AQP5の短鎖Ub化は微量であり、構成性および調節性のAQP5輸送および局在を見分けるための新たな実験系の構築が求められた。そこで現在、AQP5とUbの二分子間相互作用の細胞内局在を解析可能なPLA(Proximity Ligation Assay)法と特定ユビキチンリガーゼにより半強制的にAQP5を短鎖Ub化させ局在を調べる方法の構築に取り組み、AQP5短鎖Ub化の役割とは何か模索している。
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