研究課題/領域番号 |
23792129
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
設楽 彰子 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (30508718)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 極性輸送 |
研究概要 |
極性輸送のマーカータンパク質であるNa+/K+ ATPaseとGPIのcDNAを譲渡により入手し、SNAPタグおよびCLIPタグのcDNAと結合させ、Na+/K+ ATPase -SNAPとCLIP-GPI発現ベクターを構築した。次にこれらをHeLa細胞に発現させ、蛍光標識リガンドにてラベルして共焦点顕微鏡にて観察したところ、いずれのリガンドでも特異的な蛍光像は観察されなかった。そこでSNAPタグと同様に蛍光リガンドを共有結合させるタイプのタグである、Halo タグまたは FlAsHタグを用いて同様の実験を行った。その結果Haloタグを融合した輸送マーカータンパク質は、Haloタグリガンドにより特異的にラベルさることがわかった。これらの結果から、極性輸送のイメージングにはHaloタグが適していることが示唆された。 さらに以前に作製した、蛍光タンパク質を融合させたカルシウム調節タンパク質(Stim1-mKO1)を発現するアデノウイルスベクター(Stim1-mKO1-Adeno)を用いて、顎下腺組織に外来遺伝子を発現させる条件を検討した。 Stim1-mKO1-Adenoを顎下腺開口部から注入し、2日後の顎下腺を摘出し蛍光を観察しところ、Stim1-mKO1 は腺房細胞に発現することが確認された。さらにカルシウムイメージングによる機能的解析から、Stim1-mKO1 は腺房細胞において、カルシウム調節タンパク質として生理的に機能することが示された (Morita et al., Arch Oral Biol., 56(11): 1356-1365, 2011)。これらの実験から、アデノウイルスベクターを用いて腺房細胞に外来遺伝子を発現させるための基本的なプロトコールが確立された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画としては、(1)極性輸送のマーカータンパク質を発現するベクターを作製することと、(2)培養細胞を用いて極性輸送のマーカータンパク質の細胞内輸送を解析することの2つの計画があった。これまでの研究で、蛍光リガンドを共有結合させることにより標的タンパク質をラベリングするタグである、SNAPタグ、CLIPタグ、Haloタグ、FlAsHタグの4種類のタグのcDNAにNa+/K+ ATPaseのβサブユニット(基底側輸送マーカータンパク質)またはGPI(腺腔側輸送マーカータンパク質)のcDNAを結合したプラスミドベクターを作製し、合計6種類のベクターを得ることができた。当初はSNAPタグまはたCLIPタグを融合したもののみを作製する予定であったが、計画よりも多種類のベクターを作製することができた。さらに、これらの6種類のプラスミドベクターからタグを結合させた輸送マーカータンパク質のcDNAを切り出してアデノウイルス用のシャトルベクターに組み込んだ。現在、アデノウイルスベクターの発現カセットにシャトルベクターのcDNAを挿入することによりアデノウイルスベクターを作成中である。 培養細胞を用いて極性輸送のマーカータンパク質の細胞内輸送を解析するために、HeLa細胞にSNAP, CLIP, Halo, FlAsHタグを融合した輸送マーカータンパク質を発現させ、蛍光リガンドによりラベルした。その結果Haloタグ融合輸送マーカータンパク質において特異的なラベリングが観察された。現在Haloタグ融合輸送マーカータンパク質をHeLa細胞に発現させ、2種類の蛍光標識が異なるHaloタグリガンド(HaloTag-TMR LigandとHaloTag-Coumarin Ligand)を用いて、細胞内でパルスチェイス解析をするための条件を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究でHeLa細胞に発現させたHaloタグ融合した輸送マーカータンパク質は、Haloタグリガンドにより特異的にラベルされることがわかった。そこで今後は、Haloタグ融合輸送マーカータンパク質を2種類の蛍光標識が異なるHaloタグリガンド(HaloTag-TMR LigandとHaloタグ-Coumarin Ligand)を用いて時間差でラベルすることにより、細胞内輸送をパルスチェイス解析する。 また、これまでの研究でSNAPタグ、CLIPタグ、Haloタグ、FlAsHタグの4種類のタグのcDNAにNa+/K+ ATPaseのβサブユニットまたはGPIのcDNAを融合した、合計6種類のプラスミドベクターが作製された。これらのベクターの中で、HeLa細胞において特異的なラベリングがなされたのはHaloタグを融合したタンパク質だけであったが、細胞種によってタグのラベリングの特異性が変わる可能性も考えられる。そこでこれらのプラスミドベクターをすべてアデノウイルスベクターに移し替え、6種類のアデノウイルスベクターを作製する予定である。さらにStim1-mKO1発現アデノウイルスベクターを用いた研究により得られた、腺房細胞に外来遺伝子を発現させるための基本的なプロトコールに従って、作製したアデノウイルスベクターを腺房細胞に発現させる。そして、それぞれのタグに対する蛍光リガンドを反応させ、どのタグが唾液腺腺房細胞において特異的・効率的にラベルされるかを明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
パルスチェイス実験を行うため、SNAP-Cell TMR-Starリガンド、CLIP-Cell 505リガンド(New England BioLabs)、FlAsH-EDT2 labeling reagent, ReAsH-EDT2 labeling reagent (Molecular Probes), HaloTag TMR Ligand, HaloTag Coumarin Ligand (Promega)を購入する予定である。また、アデノウイルスベクターを作製するためにAdeno-X Expression System 1およびAdeno-X Virus Purification Kits(Clontech)を購入する。さらに、すべてのin vivo実験に使用するラットは年間80-100匹程度を予定している。また、研究成果を国内の学会で発表するための旅費に使用する予定である。
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