研究課題/領域番号 |
23792129
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
設楽 彰子 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (30508718)
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キーワード | 唾液腺 / 極性輸送 |
研究概要 |
基底側方向への小胞輸送を可視化するため、基底側への輸送のマーカータンパク質であるNa+/K+ ATPaseにHaloTagの遺伝子を融合したプラスミドを作製した。これをHeLa細胞に発現させてHaloTag TMR Ligandにてラベルしたところ、細胞膜に特異的なラベルが観察された。また、HaloTag TMR Ligandによる染色はHaloTag Coumarin Ligandの前処理によって抑制されたことから、これらのリガンドを組み合わせて用いてリアルタイムイメージングによるパルスチェイス解析を行った。HaloTag Coumarin Ligandにて細胞膜に発現しているHaloTag融合Na+/K+ ATPaseをブロッキングした後、HaloTag TMR Ligandを添加し、19℃で2時間インキュベートした。さらに顕微鏡ステージ自動温度制御システムを用いて顕微鏡上でこの細胞を31℃でインキュベートしたところ、ラベルされたHalo融合Na+/K+ ATPaseがゴルジ体から細胞膜へ輸送される様子がリアルタイムで観察された。 次に、Haloタグ融合Na+/K+ ATPaseを唾液腺に発現させるため、Haloタグ融合Na+/K+ ATPaseを発現するアデノウイルスベクターを作製した。アデノウイルスベクターをラットの顎下腺開口部から逆行性に注入し、導管を介してトランスフェクションした。2日後に顎下腺を摘出し凍結切片を作製して、Haloタグ融合Na+/K+ ATPaseの局在を免疫組織化学により解析したところ、基底側のみに発現することが確認された。さらにHaloタグ融合Na+/K+ ATPaseをトランスフェクションした顎下腺から酵素処理により細胞を分離し、HaloTag TMR Ligandによりラベルしたところ、細胞膜への特異的にラベルが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画としては、①アデノウイルスベクターをラットの顎下腺開口部から逆行性に注入することにより、in vivoで顎下腺導管細胞に共有結合性タグ融合基底側または腺腔側輸送マーカータンパク質を発現させる。②ラット顎下腺導管細胞に輸送マーカータンパク質を発現させ、それらの輸送経路を調べる。の2つの計画があった。これまでの研究で、ラット顎下腺にHaloTag融合Na+/K+ ATPaseを発現させそれらが基底側の細胞膜に特異的に発現することが確認された。さらにこれらのタンパク質を生細胞でHaloTag TMR Ligandを用いてラベルすることに成功した。また、Haloタグ融合輸送マーカータンパク質を2種類の蛍光標識が異なるHaloTagリガンド(HaloTag® TMRとCoumarin Ligand)を用いて時間差でラベルすることにより、細胞内輸送をリアルタイムイメージングによるパルスチェイス解析するプロトコールを確立した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、HeLa細胞で得られたHalo Tagを用いたリアルタイムイメージングによるパルスチェイス解析のプロトコールをもとに、顎下腺腺房細胞に発現させたHaloTag融合Na+/K+ ATPaseの基底側方向への輸送の動態をパルスチェイス解析する。また、基底側へ選別を制御すると考えられる分子(AP-1B, AP-4, クラスリン)に対するshRNAを発現するウイルスベクター(GIPZ Lentiviral shRNA)をThermo Scientificから購入し、培養細胞を用いてノックダウン効果を確認する。さらにsh RNA発現ウイルスベクターをHaloTag融合Na+/K+ ATPase発現ベクターと同時にラットの顎下腺開口部から逆行性に注入し、HaloTag融合Na+/K+ ATPaseの基底側方向への輸送を解析し、ラット顎下腺導管細胞における基底側への選別制御分子を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
shRNAを発現するウイルスベクター(GIPZ Lentiviral shRNA)をThermo Scientificから購入する。さらに、すべてのin vivo実験に使用するラットは年間80-100匹程度を予定している。また、研究成果を国内の学会で発表するための旅費に使用する予定である。
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