研究概要 |
我々は基底側方向への小胞輸送を可視化するために、基底側への輸送マーカータンパク質であるNa+/K+ ATPaseに数種類の共有結合性のタグ(Halo tag, SNAP tag, FlAsH tag)を融合したベクターを作製してHeLa細胞に発現させ、蛍光リガンドでラベルをした。その結果、細胞膜に発現したHalo tag融合Na+/K+ ATPase を蛍光リガンドにて特異的にラベルすることができた。無蛍光のブロッキングリガンドと蛍光リガンドを組み合わせて、新規に合成されたHalo tag融合Na+/K+ ATPaseの輸送を調べた。ゴルジ体で新規に合成されたHalo tag融合Na+/K+ ATPaseが、細胞膜へ小胞輸送される動態をリアルタイムで観察することができた。さらに細胞を固定し、エンドソームのマーカータンパク質の抗体を用いて免疫染色した結果、Na+/K+ ATPaseとの共局在はほとんど観察されず、Na+/K+ ATPaseはエンドソームを経由せずに細胞膜へ輸送されることがわかった。 Halo tag融合Na+/K+ ATPaseを用いて唾液腺の細胞における輸送を解析するためにアデノウイルスベクターを作製した。アデノウイルスベクターをラットの顎下腺開口部から逆行性に注入し、導管を介して顎下腺細胞に遺伝子導入をした。2日後に顎下腺を摘出して免疫染色にてHalo tag融合Na+/K+ ATPaseの発現を確認したところ、基底側への発現が確認された。そこでHalo tag融合Na+/K+ ATPaseを発現させた顎下腺細胞を酵素処理し、細胞を調整した後、蛍光リガンドを用いてラベルしたところ、基底側だけではなく、腺腔側も含めた細胞膜全体へのラベルが観察された。
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