研究課題/領域番号 |
23792131
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
西村 晶子 昭和大学, 歯学部, 助教 (00551227)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 咀嚼運動 / 三叉神経運動核 / 顔面神経核 / 協調運動制御 |
研究概要 |
本研究は咀嚼運動において口腔周囲組織を協調的に活動させるプレモーターニューロンを同定し協調運動制御を担う神経回路を検索することを目的とした。平成23年度は、顔面神経核の背側で三叉神経運動核の腹側に位置する網様体(RdVII)のニューロン群に着目し、このニューロン群から顔面神経核の表情筋運動ニューロンおよび三叉神経運動核の閉口筋・開口筋運動ニューロンに出力が送られていることを検証した。 新生仔ラットから顔面神経核および三叉神経運動核を含む脳幹スライス標本を作製しRdVII領域の吻側部を電気刺激すると、刺激後3msで両運動核に光学的膜電位応答が誘発されることから、RdVIIから両運動核へ興奮性の出力が送られることが示唆された。RdVIIニューロンが両運動核の運動ニューロンを協調させるとすれば、RdVIIニューロンから両運動ニューロンへの入力は同期すると考えられる。 しかし表情筋運動ニューロン、閉口筋運動ニューロン、開口筋運動ニューロンから同時パッチクランプ記録をとり、RdVIIの電気刺激によって誘発される応答が各運動ニューロンで同期するか検証したところ、どのニューロンも同期しないことが明らかとなった。また記録された応答パターンから、各運動ニューロンに入力するプレモーターニューロンは近接しているが混在せず、独立して分布する可能性も示唆された。 以上の結果を、第53回歯科基礎医学会学術集会にて報告した。次年度は各運動ニューロンに入力するプレモーターニューロンの存在部位を検証し、協調運動制御を担う神経回路の解明につなげたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、RdVIIに咀嚼筋運動ニューロンおよび表情筋運動ニューロンにシナプス結合するプレモーターニューロンが存在することを明らかにし、咀嚼運動における協調運動制御機構を検証することを目的とした。平成23年度は、RdVII領域に咀嚼筋運動ニューロンおよび表情筋運動ニューロンに出力を送るニューロンが存在することを明らかにすることが計画された。 当初はCagedグルタミン酸を用いたレーザーによる光刺激で明らかにする予定であったが、電気刺激を用いて各運動ニューロンの応答の同期性を検討する実験に変更した。研究手法は変更したが、各運動ニューロンに出力を送るプレモーターニューロンがRdVII領域に存在することが示唆され、次年度に計画されていた応答パターンの電気生理学的特性の検証なども実施されていることから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究結果から、各運動ニューロンに出力を送るプレモーターニューロンがRdVII領域で近接はするが混在せずに存在することが示唆されたことから、各プレモーターニューロン群の存在部位を検索し、口腔周囲組織の協調運動制御への関わりを検討する。 プレモーターニューロン群の存在部位検索にはCagedグルタミン酸を使用したレーザーによる光刺激を用いて行う。RdVII領域を網羅的にレーザー照射し、パッチクランプ記録した運動ニューロンに応答が誘発される刺激部位を検索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度と同様、脳幹スライス標本作製のための実験動物準備、手術関連器具・消耗品購入、試薬類購入の費用が必要となる。 申請時に予定された刺激用アイソレーターは研究計画の変更により購入の必要がないため、Cagedグルタミン酸の購入に充てる。 研究成果を発表するため、学会発表に関する費用および論文発表に関する費用が必要となる。
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