口腔ジスキネジアは、高齢者にしばしばみられる顎顔面の不随意な運動異常であり、歯科臨床において治療の妨げとなる。口腔ジスキネジアの発症には大脳基底核が深く関与することが指摘され、線条体のドパミン機能亢進がその発症に重要な役割を果たすことが示されているが、線条体のみではその発症機構を説明することは難しい。申請者はこれまでに側坐核のドパミン機能も口腔ジスキネジア発症に重要な役割を果たすことを報告してきた。そこで本研究では、側坐核shell、側坐核core、線条体腹外側部および線条体背側部のドパミン神経の役割ならびにその関連性についてin vivo microdialysis法を用いて解明することを目的とした。 昨年度は、側坐核shellのドパミン機能亢進が側坐核coreのドパミン機能を低下させること、側坐核coreのドパミン機能低下が線条体腹外側部のドパミン機能を亢進させることを明らかにした。そこで本年度はまず、線条体腹外側部と線条体背側部の関連性について検討した。線条体腹外側部にドパミン受容体アゴニスト(SKF 38393とquinpirole)を投与した結果、線条体背側部のドパミン量は低下した。このことから、線条体腹外側部のドパミン機能が亢進すると、線条体背側部のドパミン機能は低下することが明らかになった。次に、側坐核shellのドパミン機能の亢進が線条体背側部に与える影響について検討した。側坐核shellにドパミン受容体アゴニストを投与したところ、線条体背側部のドパミン量は低下した。この結果から、側坐核shellのドパミン機能が亢進すると線条体背側部のドパミン機能は低下することが明らかになった。 以上の本研究の結果から、側坐核shell-側坐核core-線条体腹外側部-線条体背側部のドパミン神経回路が、口腔ジスキネジアの発症に関与する可能性が示唆された。
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