破骨細胞は、骨を吸収する際、アクチン骨格の再編成と波状縁の形成により、極性化する。この過程の詳細なメカニズムは不明である。我々は、Wnt5a及びその受容体であるRor2を欠損した破骨細胞では、アクチンリングが形成されず、骨を吸収できないことを見出した。そこで、破骨細胞極性化におけるWnt5a-Ror2シグナルの役割を解明することを目的とし、以下の研究を行った。 昨年度までに、Ror2を欠損した破骨細胞に恒常的活性型のRho (caRho)を過剰発現させるとアクチンリング形成と骨吸収活性が回復することを明らかにした。今年度は、Ror2の下流でRhoの活性化に関与する分子の同定を目的とした。 WntシグナルによるRhoの活性化には、Formin homology (FH)ドメインを持つタンパク質である、Dishevelled-associated activated morphogenesis (Daam)が関与するという報告がある。RT-PCR法により、成熟破骨細胞におけるFHドメインを持つタンパク質の発現を調べたところ、成熟破骨細胞においてDaam2、Fmnl2、Fmnl3が高発現していた。これらのタンパク質に対するshRNA発現用アデノウイルスを作成した。破骨細胞のアクチンリング形成及び骨吸収活性は、Daam2に対するshRNA(shDaam2)を発現させることで、顕著に抑制された。Fmnl2、Fmnl3に対するshRNAは、アクチンリング形成に影響しなかった。shDaam2を発現した破骨細胞では、Wnt5a誘導性のRhoの活性化が認められなかった。また、shDaam2を発現した破骨細胞に、caRhoを発現させるとアクチンリング形成及び骨吸収活性が回復した。 Daam2は、Rhoの活性化を介して、アクチンリング形成に関与することが明らかになった。
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