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2011 年度 実施状況報告書

シングルセルクローニング法を応用した口腔がん幹細胞の基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23792138
研究機関北海道大学

研究代表者

北村 哲也  北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00451451)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード抗癌剤
研究概要

本研究は口腔がんのがん幹細胞を含む、腫瘍を構成する全ての細胞を根絶すること、あるいは抑制することを目標とし、そのためにがん幹細胞の性状を明らかにすることを目的としている。口腔癌細胞株HSC-3からシングルセルクローニング法を用いて数種類の細胞株を得た。成長の速度やシスプラチンの感受性が細胞間で微妙に異なったことから、それら細胞株は性質の異なった数種の細胞株と考えられた。それぞれの細胞からcancer stem cell(以下CSC)を取り出すためにside population(以下SP)に相当する細胞群をFACS解析にて抽出した。申請者はシングルセルから細胞株を樹立した際に、播種した細胞の約10%から細胞株を樹立できたことから、HSC-3細胞におけるCSCの割合はその程度と見積もっていた。しかし、どの細胞株もSPに相当する細胞は解析した細胞の0.6%であり、予想に反して少なかった。このことは、培養細胞においてシスプラチンの抵抗性はSP、つまりCSCの細胞の数に依存しているわけではないことを示唆している。またシングルセルクローニングによって拾い上げたひとつの細胞は、確率的に考えてCSCとは限らないと考えられた。そしてCSCでない一つの癌細胞―cancer cell(以下CS)から増殖した細胞はCSCにも分化できる可能性が示唆された。 また培養細胞をシスプラチンで処理したときには、生存した細胞を0.6%以下になるようなシスプラチン濃度を使用して初めてCSCの耐性を調べることができることがわかった。また申請書の通り、CSCのシスプラチン耐性遺伝子をマイクロアレイで同定しても、それが本当に責任遺伝子であるかを判断することは困難を極めると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

口腔癌細胞株HSC-3からシングルセルクローニング法を用いて数種類の細胞株を得た。これらをシスプラチンにて処理し、それぞれの薬剤耐性を調べた。またHoechest33342にてFACS解析を行い、Side populationを選別したが、その割合は予想をはるかに下回る割合であった。しかしこの結果はとても示唆的で、上に記したようなことが考えられた。特にCSCの薬剤耐性を解析する実験系において、シスプラチン濃度の指標が明らかになったことは今後の実験に大きく寄与すると考えられる。 当初の計画からは外れており方向修正を余儀なくされている状態ではあるが、独立したクローンから樹立した細胞の、シスプラチン感受性が異なること、そしてそれらは同程度のCSCを含んでいることが明らかとなった。さらに、先に示したFACSの実験においてABCトランスポーター阻害剤であるVerapamilを併用するとSPが消失することが明らかとなった。これはVerapamilがCSCの薬物排泄能を阻害したことによると考えられた。それらを総合して(2) おおむね順調に進展していると自己評価を行った。

今後の研究の推進方策

Cancer stem cell(CSC)は排出能が亢進しているため、抗癌剤に抵抗性を示すと考えられている。Verapamilは抗不整脈薬の一つで、Ca2+チャネルを阻害するものと考えられており、マルチドラッグトランスポーターを阻害すると考えられている。実際、FACS解析においてVerapamilで処理した細胞はSide populationを消失した。このことから、シスプラチンとVerapamilを同時に使用することで、CSCの働きを抑制して抗がん剤の効果を高めることができると予想された。申請者はこれまでシスプラチンに対する内因性耐性遺伝子を幾つか同定しており、それらの発現をsiRANで抑制するとシスプラチン感受性が上昇することを明らかにしている。これらの効果をVerapamilがさらに増強するのかを調べる予定である。

次年度の研究費の使用計画

細胞を目で確認しながらシングルセルクローニングを行えるpico pipetは本年度購入予定であったが、購入前に実際にその機械を用いてデモを行ったところ、シングルセルから細胞株を樹立することが不可能であったため、購入を見送ることにした。そのぶんは細胞培養にかかる培地やプラスチック類、verapamilやトランスフェクション試薬などの薬品類を購入する予定である。またmRNAを抽出するためにRNeasy Mini kit (qiagen) cDNA逆転写酵素 (toyobo)、 リアルタイムPCR用ポリメラーゼ(toyobo)、免疫組織学的検討に用いる抗体を購入予定としている。今回の成果を発表するための学会参加も予定している。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] iral mediated stabilization of AU-rich element containing mRNA contributes to cell transformation2011

    • 著者名/発表者名
      Kuroshima T., Aoyagi M., Yasuda M., Kitamura T.,and Higashino F.. 他
    • 雑誌名

      Oncogene

      巻: 26 ページ: 2912-2920

    • DOI

      10.1038

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The phenotype of tumor lymphatic vessels could be a prognostic factor in human tongue squamous cell carcinoma2011

    • 著者名/発表者名
      Nitta Y, Hida K, Kitamura T, Higashino F, Fukushima K, Shindoh M
    • 雑誌名

      Oncol Lett.

      巻: 2 ページ: 79-84

    • 査読あり
  • [学会発表] New methods of identify resistance genes for chemotherapy2011

    • 著者名/発表者名
      北村哲也, 進藤正信他
    • 学会等名
      日本口腔病理学会総会
    • 発表場所
      九州大学 (福岡県)
    • 年月日
      2011. 8. 24
  • [学会発表] Cisplatn resistance: new method of searching not acquired but intrinsic resistance genes2011

    • 著者名/発表者名
      北村哲也, 進藤正信他
    • 学会等名
      細胞生物学会
    • 発表場所
      北海道大学 (北海道)
    • 年月日
      2011. 6. 27
  • [学会発表] 抗癌剤によって誘導されない耐性遺伝子検索の新たな試み2011

    • 著者名/発表者名
      北村哲也, 進藤正信他
    • 学会等名
      日本病理学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 (神奈川県)
    • 年月日
      2011. 4. 28
  • [学会発表] 東日本大震災における歯科医療救護活動 ー震災から2か月後に支援したこと、学んだことー2011

    • 著者名/発表者名
      北村哲也, 進藤正信他
    • 学会等名
      口腔保健学会(招待講演)
    • 発表場所
      北海道大学 (北海道)
    • 年月日
      2011. 11. 8
  • [学会発表] New approach to identify genes associated with cisplatin resistance2011

    • 著者名/発表者名
      Tetsuya Kitamura
    • 学会等名
      Egyptian dental associateion, The 15th international dental congress(招待講演)
    • 発表場所
      Intercontinental City Stars Hotel (Egypt)
    • 年月日
      2011. 10. 22

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公開日: 2013-07-10  

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