研究概要 |
本研究は MAP キナーゼ経路制御因子 Sprouty2 による 舌癌の増殖・転移抑制機構の解明のため、FGF - MAPK 経路を中心に解析を行ってきたが、舌癌の組織型である扁平上皮癌の増殖機構に関して、TGF-β シグナルも非常に重要な働きをしていることが知られており、この TGF-β シグナルは MAPK 経路ともクロストークすることが知られているため、Sprouty2 がこの TGF-β シグナルヘ与える影響について解析し、Smad1/5/8 のリン酸化を抑制することがわかった。本年度は癌の浸潤・転移機構について、以下の 2 点について解析を行った。 (i) 癌の浸潤に関わる MMP 発現と Sprouty2 の役割:癌の浸潤に関わる MMP-9の発現を mRNA レベルおよびタンパク質レベルで抑制していることを Real-time PCR および western blot 法・ELISA 法を用いて解析した。その結果、Sprouty2 発現群は MMP-9の発現が減弱しており、その原因として、ERK1/2 のリン酸化抑制を介して、発現抑制していることが考えられた。 (ii) 癌の転移機構に関わる VEGF 発現における Sprouty2 の役割:癌細胞はその自らの栄養確保のため、新生血管を誘導するため VEGF を産生しており、これが Sprouty2 によってどのように制御されているかを ELISA 法を用いて解析した。なかでも、VEGF-C はリンパ管新生に関わっていることからその発現を解析したところ、Sprouty2 導入群で VEGF-C の発現が有意に減弱していた。 以上の結果から, Sprouty2 は口腔癌の転移機構、殊にリンパ行性転移における抑制因子として作用することが考えられた。
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