研究課題
抗腫瘍活性を示すヒト型モノクローナル抗体セツキシマブを感作した口腔癌細胞に対して抗腫瘍免疫応答を増強することができると考えられる新規遺伝子組み換え抗体CR2-Fcを遺伝子工学技術により作製することを試みた。まず、ヒトCR2のN末端側の4つのSCRとヒトIgG1の定常領域配列を人工的につなぐため、ヒトIgG1定常領域発現ベクターへ組み込むための酵素部位を含んだプライマーを設定した後、pBM-CR2をテンプレートとしてPCRを行った。得られたPCR産物をクローニングベクターに組み込み、配列を確認した後、ヒトCR2を酵素により切り出し、ヒトIgG1定常領域発現ベクターと共にライゲーションを行うことにより、ヒトCR2-Fc発現ベクターを構築した。次に、ヒトCR2-Fc発現ベクターが転写・翻訳されてタンパク質を発現するかどうかを確認するため、COS7細胞に遺伝子導入した後、培養上清と細胞を回収し、ウエスタンブロットにより確認したところ、抗CR2抗体、抗ヒトIgG抗体共に予想される分子量を示した。さらに、恒久的にヒトCR2-Fcを発現させるため、CHO細胞に遺伝子導入後、クローニングを行い、ウエスタンブロッティング法で高発現CHO細胞のスクリーニングを行うことによりヒトCR2-Fc安定発現CHO細胞を作製した。しかしながら、十分量のヒトCR2-Fcを得るためにはより発現量の高い発現システムを構築した方が良いと考え、より強い発現ベクターに組み換えることを検討中である。
2: おおむね順調に進展している
予定ではCR2-Fc作製が2年目となっていたが、遺伝子組み換えした後タンパクを大量発現及び精製という実験には多くの時間を要するため、こちらを前倒しして実験を行った。これによって時間のかからない活性測定等を2年目にでき、計画通りに実験を終えることができると考える。
1年目と2年目の計画が変更したが、EGFRへのEGFの結合を阻害することで抗腫瘍活性を示すヒト型モノクローナル抗体セツキシマブが口腔癌細胞に対して抗腫瘍免疫応答を誘導できるかどうかを、in vitro、in vivoの両方の実験系を用いて検討する。また、作製したヒトCR2-Fcとの相乗効果もあわせて検討する。
次年度の研究を進めるにあたり、遺伝子組み換えタンパク質発現ベクターを遺伝子導入した細胞をストックするために必要な液体窒素タンク及び作製した遺伝子組み換え蛋白質を保存しておく小型超低温フリーザーを購入予定である。消耗品費については、活性測定、動物実験、組み換えタンパク質を大量精製等の費用が必要となる。国内旅費は年1回免疫学関連の主要な学会で研究発表を行うための経費、外国旅費は、研究協力者との研究打ち合わせのために必要であると考える。また、研究成果を公表するべく、論文の作成や投稿を積極的かつ効率よく進めるため、複写費及び論文投稿費をその他の費用として計上した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
臨床免疫・アレルギー科
巻: 56 ページ: 31-37
http://ci.nii.ac.jp/naid/40018938406
Cytokine
巻: 56 ページ: 180-187
Anticancer Research
巻: 31 ページ: 2511-2516
Microbiology and Immunology
巻: 55 ページ: 191-198