研究課題/領域番号 |
23792149
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
沖永 敏則 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60582773)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 心血管疾患 / マクロファージ / 歯周病原細菌 |
研究概要 |
今回の研究で、歯周病原性細菌による粥状斑(アテローム病変)形成のメカニズムについて、クオラムセンシングの視点に立って解明する。まず、LDLやLPSなどが歯周病原性細菌のマクロファージ細胞への付着にどのように影響するかについてクオラムセンシングの視点にたって細胞ならびに細菌遺伝学的に解析した。まず、微小流路細胞培養系を用いたLDLやLPS共存下でのマイクロピラーへの付着量を評価した。in vitroで粥状斑の形成を再現するため、微小流路細胞培養系を用いて、高脂質栄養環境(LDL)やLPS刺激環境下およびバイオフィルム形成下でのマイクロピラーへの細胞付着量を評価したところ、両環境とも付着量を増大させる結果を得た。SOCSは、炎症応答に関与するシグナルで、サイトカインシグナル抑制因子として報告されている。そこで、SOCS1/SOCS3強発現細胞のマイクロピラーへの付着量の評価を行った。SOCS1およびSOCS3を強発現したマクロファージを作成し、LDLやLPSの影響を調べる。さらに、A.actinomycetemcomitansを感染させ、それぞれのアテローム病変の形成量をリアルタイムで観察した。両環境下ならびに感染により、付着量の増大は抑制された。この環境下では、それぞれの強発現細胞において誘導されるアポトーシスは抑制され、アポトーシス関連タンパク発現にも負の調節を確認することができた。そこで、SOCS1/3強発現細胞株の投与による歯周病細菌感染が誘導する血管内皮細胞上における粥状斑形成に対する抑制効果の検討を行ったところ、細胞側付着因子ICAM-1の発現に影響が及んでいることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究は、歯周病原性細菌による粥状斑(アテローム病変)形成のメカニズムについて、クオラムセンシングの視点に立って解明するを目的としている。当該年度では、LDLやLPSおよび歯周病原性細菌により、マクロファージ細胞への付着にどのように影響するかについて分子生物学的および遺伝学的に解析できた。さらに、炎症応答に関与する負の制御因子であるSOCSの強発現細胞で、LPSや歯周病原性細菌が誘導するアポトーシスが抑制され、さらにその過程で、粥状斑の形成が抑えられるという興味深い知見を得ることができた。次年度は細菌学的観点からメカニズムについて詳細に解明する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.細胞付着因子欠損P. gingivalisおよびA.actinomycetemcomitans株の作製および当該因子の粥状斑形成に関わる役割の解析。平成23年度の研究計画3において血管内皮細胞に対する付着因子を同定し、そのうえで、当該因子を欠損したP. gingivalisおよびA.actinomycetemcomitansを作製し、粥状斑の形成量を野生株と欠損株を比較することで、当該因子の役割を解析する。<方法>遺伝子欠損株作製、微小流路環流細胞培養系2.微小流路環流細胞培養系を用いたSOCS1/SOCS3強発現マクロファージのマイクロピラーへの付着量の評価。in vitroでの形成を再現するため、微小流路環流細胞培養系を用いて再現したin vitroでの粥状斑形成モデルも用いて、P. gingivalisおよびA.actinomycetemcomitansのLPSや菌体で刺激したベクターコントロール株とSOCS1およびSOCS3強発現株における遺伝子発現を比較することで、SOCS分子の分子生物学的役割を解析する。<方法>微小流路環流細胞培養系、DNAマイクロアレー3.P. gingivalisおよびA.actinomycetemcomitans以外の歯周病原性細菌におけるクオラムセンシング遺伝子の同定。Red complexに属する歯周病原性細菌が形成するバイオフィルムと血管内皮細胞間のクオラムセンシングに関連する遺伝子群をDNAマイクロアレイにより同定する。同定した遺伝子群について、LDLやレプチン存在下で培養した際の発現量の変化を、リアルタイムPCRにて評価する。<方法>DNAマイクロアレー、リアルタイムPCR
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次年度の研究費の使用計画 |
1.細胞培養に使用するプラスチック製品、血清、培地、選択用抗生物質の購入2.細菌培養に使用するプラスチック製品、培地3.微小血管流路システムの消耗品4.分子生物学的ならびに遺伝工学的解析に必要な試薬等の消耗品5.所属学会における成果発表の際の旅費 として研究費を使用する。
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