研究課題
本研究の目的は悪性腫瘍への分子生物学的なアプローチと臨床核医学的なアプローチの戦略的融合を目指すものである。本年度は18F- FDG-PET -CTを含む画像診断の詳細な分析を中心に行った。臨床歯科医学的データについては近隣の PET 健診センターへ研修に出る際に、画像解析ソフトを用いてFDG 集積の程度と分布を解析した。顎顔面領域の病変において同じ病変内でもFDG集積が部位によって異なることを見いだした。これは病理組織像の違いによる内部性状を反映するものであった。すなわち、腫瘍細胞が充実性である部位ほどFDG集積の度合いは強くなった。これは細胞増殖活性を反映するものであると推測出来た。基礎歯科医学的な実験については以下の通りである。 1)ヒト骨肉腫由来の骨芽細胞様細胞 MG63 細胞 と Saos-2 細胞、口腔扁平上皮癌細胞(SCC-25)、ヒト顎下腺癌由来唾液腺細胞(HSG)を培地を用いて通法通り培養した。UV 照射装置をを用い、培養細胞の入ったシャーレに適正な量のUV 照射を行った。至適濃度の判明している各種抗癌剤等の薬剤で培養細胞を処理し、アポトーシスを誘導した。 2)細胞のアポトーシスを確認後、SDS-PAGE 電気泳動法で蛋白を分離し、PVDF 膜上に転写し、膜上で硝酸銀を用いた独自の(Morimoto Y.,Kito S.et al.2001)、(Kito S.et al.2003)、(Kito S.et al.2005)鍍銀染色を行った。膜上の 110 kDa の蛋白とその分解産物である95kDaと 80kDa の蛋白を検出した。抗ニュークレオリン抗体を用いてウエスタンブロッティングを行い、これらの蛋白を検出した。
2: おおむね順調に進展している
画像解析ソフトを用いてFDG 集積の程度と分布を順調に分析出来ている。また、病理組織との照合も実行出来た。顎顔面領域の病変において同じ病変内でもFDG集積が部位によって異なることを見いだすことが出来た。これを裏付ける様にFDG集積の度合いが腫瘍の悪性度を反映するという研究成果が論文上で発表されている。分子生物学的なアプローチと臨床核医学的なアプローチの戦略的融合が可能になる足がかりが出来た。
研究、教育及び臨床活動で多忙であるが、研究時間を可能な限り確保して出来るだけ効率よく行える様に工夫する。具体的には基礎歯科医学的な研究は旧知のこの分野に長けた研究者とディスカッションし、無駄な研究を行わない様に努力する。臨床核医学的には顎顔面領域の病変において同じ病変内でもFDG集積が部位によって異なることを見いだすことが出来ているため、これを裏付ける症例を蓄積する。分子生物学的なアプローチと臨床核医学的なアプローチをバランスよく行っていく。
日常的に使用する試薬、細胞培養用試薬、PCR 関連試薬、12~13種類の抗体購入費、siRNA 関連試薬購入費、書籍や研究発表に研究費を使用する。今年度は14,450円の繰り越しが出たが、通常の研究活動の中での少額の繰り越しであった。次年度分と合わせて有効に活用する。18F-FDG-PET-CT 画像解析については SUV 値計測による集積強度をはじめとして 、FDG 集積の分布や腫瘍内でのある集積強度での面積を解析するソフトを導入する予定である。
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