研究課題
本研究の目的は悪性腫瘍への分子生物学的なアプローチと臨床核医学的なアプローチの戦略的融合を目指すものである。本年度は18F-FDG-PET -CTを含む画像の詳細な分析を中心に行った。臨床歯科医学的データについては画像解析ソフトを用いて18F-FDG 集積の程度と分布を解析した。口腔癌の患者の歯性感染症における18F-FDG集積の分析を詳細に行った。その結果、歯性感染症の骨吸収の度合いから見た程度と18F-FDG集積の程度に正の相関があることがわかった(Kito S.et al.2012)。すなわち骨吸収が進行する程、18F-FDGは高集積する。また、歯性感染への18F-FDG集積は患者によっては口腔癌の原発巣と同等の場合があることもわかった。すなわち口腔癌の患者の診断には歯性感染による歯列への18F-FDG高集積が起こりうる可能性を考慮する必要があることがわかった。また、本年も同じ病変内でも部位によって18F-FDG集積が異なる症例がさらに蓄積した。これは病理組織像の違いによる内部性状を反映するものであった。すなわち、腫瘍細胞が充実性である部位ほど18F-FDG集積の度合いは強くなった。これは細胞増殖活性を反映するものであると推測出来た。基礎歯科医学的な実験についてはUV 照射した細胞のアポトーシスを確認後、SDS-PAGE 電気泳動法で蛋白を分離し、PVDF 膜上に転写した。膜上で硝酸銀を用いた独自の(Morimoto Y.,Kito S.et al.2001)、(Kito S.et al.2003)、(Kito S.et al.2005)鍍銀染色を行った。膜上の 110 kDa の蛋白とその分解産物である95kDaと 80kDa の蛋白を検出した。抗ニュークレオリン抗体を用いてウエスタンブロッティングを行い、これらの蛋白を検出した。
2: おおむね順調に進展している
画像解析ソフトを用いてFDG 集積の程度と分布を順調に分析出来ている。特に今年は口腔癌の患者の歯性感染症における18F-FDG集積の分析を詳細に行った。その結果、歯性感染症の骨吸収の度合いから見た程度と18F-FDG集積の程度に正の相関があることがわかり、国際誌に掲載された(Kito S.et al.2012)。また、病理組織との照合も実行出来た。顎顔面領域の病変において同じ病変内でもFDG集積が部位によって異なることを見いだすことが出来た。これを裏付ける様にFDG集積の度合いが腫瘍の悪性度を反映するという研究成果が論文上で発表されている。分子生物学的なアプローチと臨床核医学的なアプローチの戦略的融合が可能になる足がかりが出来た。
研究、教育及び臨床活動で多忙であるが、研究時間を可能な限り確保して出来るだけ効率よく行える様に工夫する。具体的には基礎歯科医学的な研究は旧知のこの分野に長けた研究者とディスカッションし、無駄な研究を行わない様に努力する。臨床歯科医学的には歯性感染症の骨吸収の度合いから見た程度と18F-FDG集積の程度に正の相関があることがわかり、国際誌に掲載されている(Kito S.et al.2012)。さらに分子生物学的なアプローチと臨床核医学的なアプローチをバランスよく行ってけるように努力する。
日常的に使用する試薬、細胞培養用試薬、PCR 関連試薬、12~13種類の抗体購入費、siRNA 関連試薬購入費、書籍や研究発表に研究費を使用する。18F-FDG-PET-CT 画像解析については SUV 値計測による集積強度をはじめとして 、FDG 集積の分布や腫瘍内でのある集積強度での面積を解析するソフトを導入する予定である。
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