口腔扁平上皮癌細胞株であるHSC-3に対して、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である酪酸ナトリウム(SB)存在下におけるVEGF family 発現の変化を検討した。VEGF-A産生量はコントロール 群と実験群に大きな差は検出されなかったものの、VEGF-BおよびVEGF-CではmRNA発現量の減少が確認された。また血管・リンパ管誘導因子であるangiopoietin-2、platelet derived growth factor beta、VEGF-C、VEGF-Dの発現量低下が見られ、SBによる口腔癌間質誘導の抑制が示唆された。 次いで、遺伝子転写因子であるAP-1 (Fos とJunのヘテロダイマー)阻害剤としてAS601245 (1 - 5 mM)、AKT 阻害剤としてTriciribin e (1 - 10 mM)およびmTOR 阻害剤としてrapamycin(0.1 - 1 mM)を添加し、real time PCR 法ならびにWestern blot 法によりVEGF family をはじめとする各種の脈管新生誘導因子(VEGF、VEGF-B、VEGF-C)産生量を検討した。 いずれもVEGF-A、VEGF-BおよびVEGF-CのmRNA発現量の減少が確認された。以上の結果からSBによるVEGF family転写の抑制は、複数のシグナル経路により達成されると考えられた。
|