我々の研究室では頭頸部扁平上皮癌に対する分子標的治療の標的分子として、ケモカインCXCL14/BRAKが頭頸部扁平上皮癌に対して腫瘍縮小効果を有することを初めて見出した。更に、BRAKトランスジェニックマウスに癌細胞株を移植したin vitroの実験系で、形成された腫瘍塊の増殖能と、切除した移植腫瘍内での血管新生について免疫組織化学的に検討を行い、腫瘍塊形成および血管新生の抑制にBRAKが関与していることを明らかとした。本研究では扁平上皮癌におけるBRAKの血管新生抑制機序を詳細に解明することを目的とした。血管新生因子であるVEGFに着目し、in vitroの実験系で、リコンビナントBRAK及びVEGFの両タンパク質が結合するかどうか免疫沈降法で確認したところ、BRAKはVEGFに結合することが明らかとなった。またさらにヒト臍帯静脈内皮細胞であるHUVECにリコンビナント蛋白(BRAK、VEGF) を添加したが、HUVECの細胞増殖能 (セルカウント及びMTTアッセイ) に変化は認められなかった。そして、In vivoの実験系では、DIVAAシステムを用いて解析した。リコンビナント蛋白(BRAK、VEGF) を含有するコラーゲンゲルを移植用微小チューブに充填し、そのチューブをマウスの背部皮下へ移植することで、BRAK単体の血管新生抑制効果について検討したが、明らかな差は確認されなかった。また、血管新生因子であるIL-8に関しても同様な実験系を行ったが、明らかな結果を得ることはできなかった。
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