研究課題/領域番号 |
23792163
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
辺見 浩一 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (80586389)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノバブル / 根管洗浄 / 低濃度次亜塩素酸ナトリウム溶液 / 殺菌 / 超音波 |
研究概要 |
根管治療の目的は根管内の無菌化とその永続化であり、根管内の無菌化において主要な役割を担うのは次亜塩素酸溶液による根管洗浄である。次亜塩素酸は強力な殺菌効果を有するが、根管内の無菌化が達成できず、病変が再発することもしばしばである。また、根管外に漏出すると軟組織の傷害を惹起してしまう。本研究の目的は、根管洗浄液を安全な濃度で確実に作用させるための手法の開発である。ナノレベルのバブルリポゾームは、近年細胞内へのドラッグデリバリーにおける画期的な方法として注目を集めている。ナノサイズのリポゾームを超音波により破砕すると細胞表面に微細な穴があき、そこから試薬が取り込まれる。このシステムは大変効率が良く、安全性も高いと報告されている。今回の研究の目的は、ナノバブルを根管洗浄に応用し、低濃度の次亜塩素酸あるいはその他の殺菌剤にて根管を十分に洗浄・無菌化できる条件を検討することである。実験系として、大腸菌培養液に滅菌水あるいは希釈次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、さらにナノバブルを添加し超音波処理を2分間行った。その結果、終濃度0.1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液においてもある程度の殺菌力は認められたが、さらにナノバブルを加え超音波処理を行うことで、次亜塩素酸ナトリウム溶液の殺菌力が有意に増強されることが明らかになった。終濃度0.1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液では組織の損傷は軽微である(マウス口唇にて検討済み)が、その殺菌力は臨床で使用するには不十分である。今回の報告は、生体への傷害性の低い濃度での次亜塩素酸ナトリウム溶液にて根管内を効率的に殺菌することができる可能性を示したもので臨床的意義が大きい。今後殺菌メカニズムの検討を行ったうえで、本システムの臨床化に向けてさらに研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノバブルおよび超音波による殺菌効果の増強を始めて確認したことは評価できる。しかし、臨床化へ向けてより一層のスピードアップが必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
低濃度次亜塩素酸ナトリウム溶液にナノバブルを加え超音波処理を行うことで、殺菌効果が亢進したが、そのメカニズムについて検討する。また、難治性根尖性歯周炎において分離される頻度が高い、Enterococcus Faecalisを用いて同様の実験を検討する。さらに、ヒト抜去歯を用いてより臨床に近い実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ナノバブルおよび超音波の効果について走査型電子顕微鏡を用いた観察を行うことで、その効果メカニズムの一端が明らかになるものと期待される。大腸菌のみならず、Enterococcus Faecalisを用いた実験においても効果の再現性を確認する。さらに抜去歯を用いた実験において、臨床化への準備を検討する。
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