本研究の目的は、歯内療法における根管洗浄において、ナノバブルと超音波を低濃度次亜塩素酸ナトリウム溶液に併用することで、安全で最大の殺菌効果のある洗浄法を開発することである。次亜塩素酸ナトリウム溶液は非特異的な殺菌効果を有するが、現在使用されている6%の次亜塩素酸ナトリウム溶液は、根管外にリークした場合に重篤な組織損傷を惹起しうる。そのため、組織損傷を起こさない濃度で十分な殺菌効果を得るための手法の確立が求められている。平成23年度において、マウスの口腔粘膜にて組織損傷をほとんど起こさない次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度の検討を行い、0.5%溶液であれば問題ないことを確認した。次に0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液の殺菌効果について検討を行い、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液単独でもある程度の殺菌効果を有するが、そこにナノバブルに超音波を併用することで、有意に殺菌効果が増強されることを明らかにした。本年度において、その殺菌効果のメカニズムの詳細を明らかにする目的で、細菌表面の性状を透過型電子顕微鏡にて観察した。細菌には根尖病変の遷延化と関連すると報告されているEnterococcus Faecalis (E.feacalis)を用いた。その結果、ナノバブルに超音波を作用させたE.feacalisにおいては、その表面の一部が破壊されている像が多数観察された。超音波処理だけではこのような像はほとんど観察されなかった。すなわち、ナノバブルが超音波により破裂した際におきる衝撃波が細菌表面の破壊に関与している可能性があり、そのために殺菌効果が増強されたと推察される。
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