研究課題/領域番号 |
23792169
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
古本 達明 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (60432134)
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キーワード | Nd:YAGレーザー / Er:YAGレーザー / レーザ誘起衝撃応力 / 一次元弾性応力波理論 / 二酸化チタン粉末 |
研究概要 |
粉末が含有された懸濁液中にレーザー照射すると,粉末にレーザー光が吸収・加熱され,粉末の蒸散あるいは粉末周辺の溶媒の加熱・蒸散で相変化が生じて衝撃応力が発生する.今年度は,前年度に引き続き一次元弾性応力波理論に基づく測定法でレーザー誘起衝撃応力を測定した.測定される誘起衝撃応力の高精度化を図るため,測定容器形状やサイズの改良を行った.また,懸濁液中の粉末種類や粒径が誘起衝撃応力に及ぼす影響を調べた. ファイバー導光型のレーザー歯科治療器(Er:YAGレーザー)を用いて,歯質表面にレーザー照射したときの温度を赤外線輻射温度計で測定した.コンタクトチップと呼ばれる接触端子がレーザーを吸収するため,そのレーザー吸収・透過特性を明らかとした後,接触端子から出射されるレーザーエネルギーと歯質表面の温度との関係を明らかとした.また,歯種や歯色が表面温度に及ぼす影響についても詳細に検討した. また,Er:YAGレーザー照射時の温度測定に加えて,同レーザーを水中で照射したときの様子を高速度ビデオカメラで撮影して水に対する吸収特性を調べると共に,レーザー照射時に生じる現象を詳細に考察した.さらに,抜去したヒトのエナメル質を用いて試料表面の水層の有無による除去特性を調べ,レーザ条件と除去深さや除去体積との関係を明らかとした.その結果,レーザー照射による歯質表面の窩洞形成では,水膜の有無によって歯質除去メカニズムが異なることがわかった.水膜が無いと,歯質内に含まれるOH基にレーザが吸収され歯質が瞬時に蒸発することで除去されるが,水膜を付加するとレーザ照射直後から発生する蒸気泡やレーザ照射後に蒸気泡が急激に収縮することで発生するキャビテーションが寄与していることが示唆された. 各種粉末を用いた懸濁液に細菌を入れ,細菌の凝集性について調べたが,粉末種類と細菌の凝集性との顕著な相関は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に示した平成24年度の実施内容について,予定通りの実験を行うことができた.前年度からの懸案事項である,水中でレーザー照射したときのファイバー先端の様子を可視化する実験も順調に行うことができた. 各種粉末による細菌の凝集性についてSEMによる観察を行ったが,粉末種類と細菌の凝集性との顕著な相関は認められなかった.実験方法や観察方法について検討を行い,これらの相関について明らかとしていきたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
レーザー照射に起因して発現する殺菌についてそのメカニズムを検討するため,懸濁液に細菌を含有した菌浮遊液にレーザー照射を行い,菌液を適宜稀釈してMS寒天培地に接種・培養した後,一定時間経過後に生じた集落数を測定し,粉末条件,レーザー条件,温度,衝撃応力と殺菌作用発現との関連を調べる.また,インパルスハンマーを用いて菌浮遊液に機械的な衝撃応力を加え,それらの比較から衝撃応力のみによる殺菌効果も評価する.加えて,グラム陽性菌とグラム陰性菌で比較して,膜厚の違いによる衝撃応力の効果も調べる.これまで,混合液全体を70℃で15分間保持すると混合液内の生菌が0となることを示している.また,レーザー照射条件を検討して,懸濁液濃度が同じ場合でも菌浮遊液内の温度が変化することがわかっている.これらの実験で得られた結果と細菌実験による条件を詳細に検討し,各因子が殺菌に与える影響について評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
各種レーザー,レーザー周辺機器,衝撃応力測定装置に係る計測機器一式,温度測定に係る計測機器一式,光学顕微鏡,電子顕微鏡,3次元粗さ計など,ほとんどの設備は研究室内に保有している.しかしながら,研究で使用する細菌の管理および細菌を用いた実験は,研究協力者である歯科医師と行っている.研究協力者である歯科医師が秋田県開業医,また,レーザーメーカーが山梨県所在であるため,細菌を使用した実験や装置カスタマイズの打ち合わせを行うため,定期的に各地に赴く必要がある.また,本研究内容に関する各機関の競争が激しく,得られた成果について速やかに学会発表や論文投稿するための諸経費が必要となる.したがって,全体経費に占める旅費の割合が多くなっている. また,本年度の実験に必要なインパルスハンマーを新たに購入する必要がある.これらの設備備品は,明細作成にあたり事前に取扱業者から見積を取っているため全て妥当な金額である.その他,レーザー照射実験を行うためのレーザー伝送用ファイバー,接触端子,電子顕微鏡観察を行うためのフィラメントやカーボンテープ,細菌実験を行うためのガラス器具などの消耗品が必要となる. 昨年度の交付金の内で313410円が未使用であるが,滞りなく実験が遂行されたため消耗品に係る支出を抑制することができ,また,出張旅費について民間からの海外派遣に係る助成を受けたためである.残額については,今年度購入を予定しているレーザー照射実験や電子顕微鏡観察を行うために必要な消耗品の購入に充てる.
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