研究課題/領域番号 |
23792170
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 雄介 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60397693)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 歯学 / 歯髄 / 象牙質 / 修復象牙質 / 第三象牙質 / 象牙質-歯髄複合体 |
研究概要 |
平成23年度の研究実施計画に基づき、ヒト象牙質基質タンパク(DMPs)分解産物の作成とその評価、ならびにDMPs分解産物が歯髄由来細胞の増殖と石灰化に与える影響について検討した。1.我々がこれまでに分離したDMPsに、象牙質に内在性に存在すると報告されている各種Matrix metalloprotainasesファミリー分子 (MMP1, MMP2, MMP3, MMP9, MMP13, TIMP1)を37℃で48時間作用させ、DMPs分解産物を生成した。得られた分解産物のタンパク濃度を一定にした上でドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド電気泳動法にて展開し、銀染色を施し、申請備品であったゲル撮影装置(Gel Doc EZ PC システム、BioRad社製)にてそのプロファイルを取得し、分解されていないDMPsと比較した。その結果、約60kDa付近のバンドが消失し、40kDa辺りに新しいバンドの存在を認めた。2.実験1で得られたDMPs分解産物を0.01~1μg/mL の濃度で培地に添加し、マウス象牙芽細胞様細胞(当初使用を予定していたMDPC-23細胞からKN-3細胞に変更)の増殖に与える影響をWST-1法にて、また石灰化に与える影響についてアリザリンレッド染色および石灰化物定量法を用いて検討した。その結果、DMPs分解産物の存在下において、細胞増殖は有意な変化を認めなかったが、象牙芽細胞様細胞の石灰化は有意に促進された。 以上の結果より、象牙質に存在する内因性のMMP分子によって分解されたDMPsは断片化を受けることで活性化され、歯髄細胞の石灰化を促進することが明らかとなった。このことより、第二象牙質と比較して急速に形成される第三象牙質(修復象牙質)の形成メカニズムの一端が明らかとなり、断片化されたDMPsが象牙質-歯髄複合体の治癒に影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画当初において使用を予定していた未分化間葉系細胞(OD-21)ならびに象牙芽細胞様細胞(MDPC-23)が、他の細胞によるコンタミネーションが疑われたため、使用細胞株をKN-3細胞に変更する必要があった。そのため、細胞入手や調整に時間を費やしたことにより、当初よりも実験の進行に遅れが生じた。ただし、DMPs分解産物の作製ならびにそのプロファイルの評価実験についてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に達成しきれなかったラット歯髄初代培養細胞を用いた研究の継続を予定している。DMPs分解産物がラット歯髄初代培養細胞の様々な機能に与える影響についての検討を行っていく。 さらにin vitroの研究で得られた結果から、象牙質-歯髄複合体の治癒に最も寄与する可能性が高いDMPs分解産物を実際に覆髄材として用いた動物実験を計画している。9週齢雄性Wistar系ラットの歯に窩洞形成を施し、そこにDMPs分解産物を覆髄材として貼付し、分泌される第三象牙質(修復象牙質)の質や量を病理組織学的な評価を行っていく予定をしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行し、若干の研究進捗の遅れもあったため、当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画そのものに変更はなく、前年度の研究費も含めて当初予定していた計画を進めていく予定である。 平成24年度は、歯髄初代培養細胞採取のためのラットの購入や、その細胞の機能を評価するための様々な試薬ならびに細胞培養用のプラスチック製品の購入を予定している。さらに動物実験でもラットの購入を予定しており、病理組織学的評価のための各種試薬や消耗品も購入する必要がある。 また、平成24年度は本研究課題の最終年度であることから、得られた成果を日本歯科保存学会学術大会(沖縄、広島)や、91st General Session and Exhibition of the International Association for Dental Research(シアトル、アメリカ合衆国)にて発表予定であり、そのための旅費を使用する予定である。さらに、論文投稿も予定しており、そのための費用の計上を計画している。
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