平成24年度の研究実施計画に基づき、ヒト象牙質基質タンパク(DMPs)分解産物が歯髄由来細胞の増殖や分化に与える影響について検討を行った。 1. DMPs分解産物をMatrix Metalloproteinaseファミリー分子であるMMP1、MMP2、MMP3およびTissue Inhibitor of Metalloproteinase 1(TIMP1)により作成し、DMPs分解産物を0.01~1μg/mlの濃度で培地に添加した条件において、マウス象牙芽細胞様細胞(KN-3)および、ラット歯髄由来初代培養細胞の増殖に与える影響についてWST-1法を用いた検討を行ったところ、KN-3細胞については、MMP1およびMMP2により生成されたDMPs分解産物によって細胞増殖が促進されたのに対して、初代培養細胞ではMMP1でのみ細胞増殖の促進が認められた。 2. DMPs分解産物が歯髄由来細胞の分化に与える影響について、分化誘導培地にDMPs分解産物を上記実験と同じ濃度で添加して評価をAlkaline Phosphatase activity (ALP)測定により行ったところ、KN-3細胞においては、MMP3により生成されたDMPs分解産物存在下において分化の促進が認められたのに対して、歯髄初代培養細胞ではMMP1およびMMP3において分化が促進された。 以上の結果より、象牙質に内因性に存在するMMP分子の作用によって分解されたDMPsは、象牙芽細胞様細胞や歯髄初代培養細胞の増殖や分化を促進し、断片化されたDMPsが象牙質-歯髄複合体の治癒に影響を与えることが示唆された。
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