研究課題/領域番号 |
23792172
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永山 智崇 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (60456944)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バイオフィルム / 歯内療法 / 術中感染 / ラバーダム防湿 / 16s rRNA遺伝子解析法 / 難治性根尖性歯周炎 |
研究概要 |
バイオフィルム試料の採取からバイオフィルム構成細菌種の定性解析を行うまでの実験系を確立した。その際、バイオフィルム試料のサンプリング方法の改善と16s rRNA遺伝子解析法の実験プロトコールの安定化が重要なポイントになることがわかった。また、歯内療法における術中感染の実態の解明を達成するためには、術前の患歯の状態(う蝕の進行度)ならびに臨床症状を正確に記録しておき、解析したデータとの綿密な照合が必要であることも判明した。以上を踏まえた上で実験を遂行し、以下のことが現在までに明らかになっている。(1) "歯髄炎(便宜抜髄含む)かつラバーダム有"の群(n=5)では、全く細菌が検出されなかった。(2)"歯髄炎かつラバーダム防湿無"の群の一部において、術中感染を起こしていると思われる症例が認められた(n=1)。さらに、術前と術後のサンプルにおいて検出された細菌の構成より、時間の経過とともに好気性菌が減少し嫌気性菌が優勢になってくる傾向が認められた。(3) 根尖性歯周炎の症例(n=3)においては、術前のサンプルからも細菌が検出され、かつ術後の感染源除去の達成度に関しても根管形態や根尖性歯周炎の病態による影響に左右され易いため、ラバーダム防湿の有無で群分けをしたとしても術中感染の有無については証明しにくいと考えられる。一方で、難治性根尖性歯周炎の成立における細菌学的な病態の解明に対しては有効なアプローチになると思われるので、今後詳細に検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床試料の収集および予備実験に時間を要したものの、現在までに実験系についてはすでに確立できており、また一部の実験結果の解析も行い興味深いデータも得られているため、基本的にはこれからさらに症例数を増やしていけば、確実に研究の目的は概ね達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ひき続き臨床試料の収集を継続し、症例数の増加を目指す。その上で得られたデータの解析については、以下のように考えている。(1) ラバーダム防湿による術中感染防止の効果については、歯髄炎の症例の解析により証明できるものと考えている。(2) 術中感染の感染経路については、現在のところ症例数が少なく未だに傾向が掴めていないので、今後症例数を増やして検討していく予定である。(3) 難治性根尖性歯周炎の成立における細菌学的な病態の解明についても、歯髄炎あるいは根尖性歯周炎の症例において術中感染が起きていると思われる症例と難治性根尖性歯周炎の根管内および根尖孔外バイオフィルム細菌に関する細菌学的な検索結果とを詳細に比較検討することにより、その糸口がつかめるものと考えている(4) バイオフィルム構成細菌種の定量解析については、(1)~(3)の定性解析を行った上で総合的に判断して特に重要と思われる細菌種に絞り、行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ひき続き臨床試料を収集し遺伝子工学的な解析を行う必要があるため、そのための試薬や消耗品および外注委託費は必須である。また、資料収集や成果発表に必要な旅費、ならびに論文投稿料といった諸経費も必要である。これらの研究経費は、本研究の目的を達成する上で妥当かつ必要不可欠であると考えられる。
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