研究課題/領域番号 |
23792176
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鈴木 茂樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (30549762)
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キーワード | 保存修復 |
研究概要 |
本研究は、う蝕除去後等の修復処置部位に、エナメル質と象牙質を再生させたり、歯芽欠損部への歯芽そのものの再生を目指すための細胞樹立法や細胞分化誘導法の開発を目的として、初期歯胚の内エナメル上皮と外エナメル上皮の遺伝子発現差異に着目し、エナメル器からのエナメル芽細胞への分化や間葉系細胞との相互作用に必須の因子を同定することを試みる。更に、同定した因子群と、上皮間葉形質転換(Epithelial to mesenchymal transition: EMT)やIPS(Induced pluripotent stem cell)細胞に見られる様な未分化性誘導因子とを組み合わせ、易採取の口腔粘膜から得られる上皮細胞に遺伝子導入を行い、エナメル芽細胞を樹立する。そして、間葉系幹細胞との相互作用で象牙芽細胞への分化を誘導し、非歯胚由来細胞での歯胚再生を目指すことである。まず、口腔粘膜由来の上皮細胞の回収、セルラインの樹立を目的として、生後1ヶ月と3ヶ月のマウス口腔内から3mm角の口腔粘膜上皮を採取し、コラゲナーゼ処理した後、上皮細胞群の単離を行った。培養開始後2日、細胞の多くは浮遊し接着しなかった。しかし一部の細胞は接着し、培養1週間でコロニーを形成するようになった。細胞形態は敷石状で一般的な上皮細胞形態であった。その後、更に1週間培養した後、細胞を培養皿より剥離し継代を行ったが、細胞が十分に接着できず、いくつかの培地・培養皿、補助細胞の活用等を現在検討している。また、いくつかの培養上皮用細胞を購入し、代用可能かどうかを検討している。マイクロダイセクションを用いた前エナメル芽細胞への分化必須因子の同定は、サンプル回収条件や部位の選定を行い、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度及び次年度を含めた達成目標は④単離した細胞群の未分化能の解析及び維持、⑤ 得られた未分化上皮細胞への遺伝子導入 (候補遺伝子の選定)、⑥ 間葉系幹細胞との接着共培養の3点であるが、④、⑤はマウス口腔上皮からの上皮細胞株樹立が困難であったために、未だ行えていない。現在は、代わりにいくつかの培養上皮用細胞株を用いて、検討を行っている。故に、⑤、⑥は次年度に目標とすることとなる。また、組織からRNAを抽出し、特異的因子の探索を行っているが、今年度に歯牙発生時の詳細な遺伝子発現変化を解析した結果が公開されたので、次年度以降はその結果を参考にしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
口腔粘膜由来細胞を用いる代わりに、いくつかの培養上皮用細胞株を用いて、特異的遺伝子の機能解析を行う予定である。特異的因子の探索・同定は、我々が現在行っている解析結果と共に、今年度に公開された遺伝子発現変化の結果を参考に行っていく予定である。これら因子の他に、元来エナメル質や象牙質に存在する特異性の高いタンパク質がエナメル芽細胞・象牙芽細胞の分化やそれら相互作用に関与している可能性が示唆されてきており、これらタンパク質、特に象牙質に特異的に発現しているDentin sialophospho protein (DSPP)の遺伝子導入や組み換えタンパク質を用いた実験系を組み合わせることも検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子発現変化解析で同定された候補遺伝子について、各種、歯性組織由来細胞での発現を定量性PCRで検討し、更に候補を絞る。その後、候補遺伝子の歯性組織由来細胞への遺伝子導入並びに、組み換えタンパクを作製し、それらの機能について検討する。本年度はこれら分子生物学試薬購入費用を主な支出として予定している。
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