研究課題/領域番号 |
23792177
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
平尾 功治 徳島大学, 大学病院, 助教 (00581399)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | カテキン / 抗炎症作用 / 自然免疫 / Toll-Like Receptor / NOD |
研究概要 |
【抜去歯資料の採取並びに歯髄細胞の培養】う蝕に罹患せず,健全な歯髄を有する抜去智歯を無菌的に切断し歯髄を摘出,細切しout grows法にて培養を行い,ヒト培養歯髄細胞を得,5~10代継代し実験に供した。また,5代以下の継代数の細胞を多数保存し,今後の研究に使用する予定としている。【ヒト歯髄細胞のカテキンに対する反応の解析】培養ヒト歯髄細胞をカテキン(epigallocatechin-3-gallate: EGCG)にて処理し, Pam3CSK4, LPS, iE-DAP, MDPといった自然免疫に関与するレセプターのリガンドで刺激し,培養上清並びにmRNAを回収,解析を行った。その結果,EGCGは,細胞が障害されると放出され免疫反応を惹起する,と報告されているHMGB1の産生を抑制することが明らかとなった。また,同様に細胞死に反応し細胞外に放出されるSpliceosome associated protein 130を認識するMacrophage inducible C-type lectin (Mincle)の遺伝子発現の増強を抑制することも明らかとなった。これらの結果より,カテキンは細菌刺激による歯髄組織の障害を抑制し,臨床的に非常に有効であると考えられる。また,カテキン処理したヒト培養歯髄細胞の抗菌ペプチドであるbeta-defencin類のmRNA発現を調査したところ,beta-defencin1, 2, 3のmRNA発現は認められなかった。【カテキンの抗菌作用の解析】Streptococcus mutans をBHI培地にて培養し,カテキンにて共培養した際のバイオフィルム形成能を測定した。その結果,S. mutansのバイオフィルム形成能にカテキンは影響しないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り抜去歯よりヒト培養歯髄細胞の初代培養に成功し,実験に供することができた。この細胞を用いた解析の結果,細胞が障害されると産生・分泌される分子のタンパク発現やそれらを認識するレセプターのmRNA発現をカテキンが抑制する事を明らかとした。カテキンの抗菌作用の解析については,EGCGはBHI培地にて培養したS. mutansのバイオフィルム産生能に影響を与えなかったものの,現在,他の培地にて培養した菌を用いたカテキンの影響も解析しており,研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究計画についてはほぼ順調に推移しており,今後,これらの解析をさらに進める予定である。今年度はさらに当初予定通り,カテキンの細胞障害性抑制機構の解明と,ラット露髄モデルにおいての覆髄剤としてのカテキンの効果を検証する。すなわち,平成23年度からの継続研究事項として,Mincleがカテキンの抗炎症作用のキーファクターとなっている可能性を検証するとともに,カテキンの作用機序の解明のため,カテキンレセプターと報告されている67-kDa laminin レセプターの発現,機能についても解析する。また,ラット露髄モデルについてはGarberらの方法 (J Endod. 2009)に従い,カテキン含有ゲルを用いて直接覆髄を行い,2, 4週間後の歯牙切片を作成し,炎症像やdentin brigeの有無について,従来材料との比較を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究計画の遂行のため,各種抗体,試薬,ならびに実験動物の購入を行う。また,今年度においてはInternational Association of Dental Research(ブラジル)での研究成果発表,英文雑誌への研究成果投稿を予定しており,研究費はこれら上記の使用計画に則り適切に使用する。なお,平成23年度において若干の次年度への繰越が生じているが,試薬の発注遅れによるものである。
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