【カテキンのサイトカイン産生抑制機構の解明】 近年,カテキンの抗がん作用・抗炎症作用において,67-kDa Laminin Receptor (67LR)の関与が強く疑われている。そこで,培養ヒト歯髄細胞を用いフローサイトメトリー法にて培養ヒト歯髄細胞の67LR蛋白発現を調査したところ,細胞膜表面での67LR蛋白の発現は認められなかった。また,カテキン処理にて増加し,カテキンの抗炎症作用を調節するとされる,TollipのmRNA発現をリアルタイムPCR法にて調査したところ,その発現量に変化は認めなかった。 カテキンは細胞膜の脂質二重膜に非特異的に結合するとの報告がなされており,カテキン処理した培養ヒト歯髄細胞を蛍光標識を行ったPAm3CSK4にて刺激し,その蛍光強度をを測定したところ,カテキン処理濃度に反比例して,蛍光強度は減弱した。これは,カテキンがPam3CSK4のレセプターへの結合を抑制し,抗炎症作用を示すことを示唆するものである。 【ラット象牙芽細胞様細胞の培養とカテキンによるサイトカイン産生抑制効果の解析】 ラット象牙芽細胞様細胞株 (KN-3)を,Pam3CSK4,LPS等,自然免疫に関与するレセプターのリガンド (PAMPs)にて刺激し,培養上清ならびにmRNAを回収し,その反応を解析したところ,KN-3はPAMPs刺激には反応を示さなかったが,TNF-alpha,IFN-gamma刺激にてCCL-20を濃度依存的に産生し,カテキンはこのCCL-20産生を抑制することが明らかとなった。 研究機関全体を通じて,カテキンは歯髄細胞の炎症反応のみならず,組織障害も抑制することが明らかとなった。また,その作用はこれまで報告されていた67LRやToolipを介する機構とは異なり,カテキンが細胞膜表面に結合することにより,レセプターのリガンド認識を阻害する可能性が示唆された。
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