研究課題/領域番号 |
23792178
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
達山 祥子 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (70347095)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 象牙芽細胞 / 歯髄細胞 / 温度感受性受容体 / TRPM8 |
研究概要 |
象牙質知覚過敏症において、動水力学説が現在最も広く受け入れられているが、この説だけでは十分に説明できない部分もまだ残っている。最近では、象牙芽細胞自身が感覚受容細胞としての機能を持ち、外部からの刺激を痛覚神経線維に伝えるという象牙芽細胞受容器説が徐々に研究されつつある。求心性の感覚神経には6つの温度感受性イオンチャンネルがあり、それらは異なる温度帯を閾値としている。熱刺激を感受するものでは VR-1 (>43℃)、冷刺激を感受するものでは TRPM8 (<25℃) があげられる。われわれは、これまでに 1) VR-1 がヒト歯髄細胞において発現すること、2) 温熱刺激により VR-1 が活性化し歯髄炎を増悪する可能性があること、3) TRPM8 が歯髄細胞、象牙芽細胞に発現すること、4) ラット歯髄の横断薄切標本における TRPM8 の発現を確認してきた。今年度においては、TRPM8 の機能について更なる検討を加えるために、擬似的な冷刺激メントールで歯髄細胞、象牙芽細胞を刺激し細胞の反応を解析した。結果、熱等による刺激で発現し細胞を保護するとされるタンパク、ヒートショック蛋白(HSP70、HSP27) の発現の増加は特に認められなかった。温度感受性イオンチャンネル(VR-1および TRPM8)はヒト歯髄細胞および象牙芽細胞において発現しており、歯における温度刺激の引き起こす痛み、知覚過敏症において何らかの役割を担っている可能性があるが、それにヒートショックプロテインの関与はしていないことが分かった。今後さらにこれらの機能について検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯髄細胞およびラット切歯歯髄横断切片における象牙芽細胞において、TRPM8の発現の確認は行っているので、今回その機能を検索するためにヒートショックプロテイン(HSP70、HSP27)の発現の解析を行った。TRPM8のアゴニストであるメントールにて象牙芽細胞を刺激し、ヒートショック蛋白の発現をRT-PCRにて解析したが、特に刺激による発現の増強、抑制とも見られなかった。温度変化により体内で産生されるヒートショック蛋白はさまざまな機能があり、最近各分野で研究されている面白い蛋白である。よって、メントール刺激によりこの蛋白の発現に変化が見られたら、研究がスムーズに展開したと思うが、今回ネガティブな結果であったため、やや研究の達成度が遅れてしまったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
歯髄・象牙芽細胞複合体を用いて、侵害刺激(温度、浸透圧、機械的ストレス)の受容体の発現をそれぞれ免疫染色、及びRT-PCR を用いて解析し、それぞれの機能をカルシウム流入実験を行うことにより確認していく。また、同複合体モデルを用いて、侵害刺激により起こる反応をシナプス伝達、歯髄炎への関与の観点から検討を加えていく。つまり、歯髄・象牙芽細胞複合体を培養し、侵害受容体である TRPV2、TRPV4、TRPA1、TRPP2、TRPM3の発現を免疫染色法および in situ ハイブリダイゼーション法にて調べる。さらには、実際にそのタンパクがそれぞれの細胞においてイオンチャンネルとして機能を果たしているかの確認を行っていく。同時に、それらのチャンネルが歯髄の痛みにおいてどのような役割をになっているか検討するために神経ペプチドや炎症性サイトカインの発現の調節について調べてみる。
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次年度の研究費の使用計画 |
歯髄・象牙芽細胞複合体のモデルの培養切片は、ラットの切歯の横断切片より作成するため、ラットの購入費、飼育費および、細胞培養培地、血清、実験試薬、染色抗体、ガラス類プラスチック類のチューブ、チップなどの消耗品がほとんどである。旅費として、年に1回か2回国内の他大学の先生との研究打ち合わせを予定している。
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