研究課題/領域番号 |
23792182
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
田中 玲奈 昭和大学, 歯学部, 助教 (80585779)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | エナメル質 / マイクロCT / 再石灰化 / 漂白 / ミネラル密度 |
研究概要 |
本研究は,エナメル質の潜在的な石灰化能を向上させることにより本来の歯質を回復することを目的としている.マイクロCTスキャナーを用い,ミネラル密度を測定することにより,エナメル質のミネラルの脱灰傾向を評価した.これまで,エナメル質の再石灰化評価には,抜去歯を薄いスライス形状に分割した断面試料が多く用いられてきた.しかし,エナメル質は物理化学的な刺激に過敏であり,サンプル加工によってミネラルの分布や構造変化を生じることが近年報告されている.そこで本研究では,マイクロCTスキャナーを用いて,エナメル質表層の特定部位をコンピュータ上で抜き出すことにより,非破壊で経時的に同一部位の測定が可能であり,ミネラル密度値の変化や分布を測定することができる.齲蝕や欠損のない健全な天然歯エナメル質と,35%過酸化水素とハロゲンランプ照射による石灰化処理を行い,その脱灰傾向を評価した.未処理の健全な天然歯エナメル質と健全な天然歯にハロゲンランプ照射のみ行ったエナメル質,および35%過酸化水素とハロゲンランプ照射による処理を行ったエナメル質を,それぞれ乳酸溶液を用いた脱灰液に浸漬して耐酸性を評価した.その耐酸性と脱灰傾向をマイクロCTおよび蛍光X線分析により評価した.また,蛍光X線分析によりカルシウムイオンの溶出量を測定した.乳酸脱灰溶液に2週間浸漬したそれぞれの試料では,35%過酸化水素とハロゲンランプ照射による処理を行ったエナメル質が最も強い耐酸性を示し,カルシウムイオンの溶出もすべてのサンプル中で最も低かった.またハロゲンランプ照射のみで処理したエナメル質はすべてのサンプル中で最も耐酸性が低く,カルシウムイオンの溶出も著しく増加したが,35%過酸化水素とハロゲンランプ照射による処理を行ったエナメル質の耐酸性は石灰化度の向上に依存すると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光エックス線分析とマイクロCTスキャナーによる分析の結果,35%過酸化水素とハロゲンランプ照射による石灰化処理を行ったエナメル質は,未処理の健全なエナメル質に比較して,乳酸溶液を用いた脱灰液に浸漬後も耐酸性が向上することを,明らかにすることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
再石灰化した再生エナメル質の耐酸性に加え,物理的強度の検討が重要である.エナメル質断面試料を用いて,ナノインデンテーション法により,未処理の天然エナメル質と再生エナメル質の脱灰と石灰化の物理的特性を評価する.また,共焦点顕微レーザーラマン分光法によりエナメル質表面から深さ方向へのアパタイト結晶度測定を行い,エナメル質の経時的な再石灰化を化学的にも検証することで天然エナメル質の防御機構の考察を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
エナメル質の物理的強度評価のため,ナノインデンテーション法による超微小領域の機械的測定に用いる測定用ダイヤモンドチップを購入する.また共焦点レーザーラマン分光法に用いるエナメル質の断面試料を作成する際に,低速切断機の購入が必要になる.本実験から得られるデータは学術的にも非常に価値の高いものであるため,国際学会での発表や国際雑誌への投稿が必要であると考えられるため,旅費等も算出する必要がある.
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