オフィスブリーチ中に歯肉および口腔粘膜にオフィスブリーチ剤が付着してしまった際に歯肉の白色化および一過性の疼痛が起こる。この際に歯肉および口腔粘膜に起きている現象を検討した研究はない。 最終年度は歯肉繊維芽細胞におけるオフィスブリーチ剤の影響を、in vitroで検討した。すなわち過酸化水素が歯肉線維芽細胞にどのような影響を与えるかについてである。まず、ヒト歯肉線維芽細胞を培養し、過酸化水素を15%の高濃度から1.5×10-6%まで振り、細胞生存率をアラマーブルー染色で検討、マイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。結果として過酸化水素濃度が高ければ高いほど細胞生存率が低くなることが明らかになった。 次いで、過酸化水素で障害を受けた細胞にビタミンEを添加する実験を行った。これは通常臨床においてビタミンE配合のクリームを歯肉に塗布することで歯肉の白色化および疼痛に有効であるという説があるためである。上記と同様にヒト歯肉繊維芽細胞を培養し、ビタミンE添加した培地で過酸化水素刺激を行いアラマーブルー染色にて検討した。その結果、ビタミンE添加により細胞生存率が高くなることが分かった。 最後に各種培養条件下で培養を行ったヒト歯肉繊維芽細胞をDNAアレイ解析を行った。過酸化水素刺激により炎症性サイトカインが誘導され、また、ビタミンE添加により細胞修復系因子が誘導されていることがわかった。このことから、オフィスブリーチ剤を使用する際は歯肉および口腔粘膜を保護し施術することはもちろん、歯肉にブリーチ剤が付着した際はビタミンE添加クリームを塗布することで緩和されることが示唆された。
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