研究概要 |
本研究ではTNF-α,IL-1β刺激によるMMP-3の炎症伝達経路はMEK1/2-ERK1/2経路の関与することが明らかにすることができた.また,半導体レーザー照射による影響についても検討を行った. レーザー照射後,37 ℃,5 % CO2条件下にて培養し,24,48,72時間後の細胞増殖を観察した.照射時間を15, 30秒, 1, 3, 5分,照射出力を0.5, 1, 2, 5, 10Wの25サンプル,コントロールとして非照射群とした.細胞への影響については,コントロールに対し0.5, 1, 2, 5W半導体レーザー照射群では細胞増殖に影響は認められなかった.半導体レーザー10W,3分照射群では細胞の死滅による細胞数の減少が認められ,照射後24,48時間では細胞数は少なかった.10W,5分照射群ではすべての歯髄細胞がレーザー照射により死滅し,培養24,48,72時間後における顕微鏡下での観察で細胞の確認はできなかった.0.5~10Wの高出力半導体レーザーについては今後,歯表面の温度上昇や歯髄に対する熱障害の危険についても検討すべきである. 次にIL-1βがヒト歯髄由来線維芽細胞のMMP-3産生にどのような影響を与えるかを検討した.MMP-3の産生はIL-1β刺激で濃度依存的に増強した.またERK1/2のリン酸化は経時的濃度依存的に増強した.IL-1β刺激により増強したMMP-3の産生は,U0126により明らかに抑制された.さらなる歯髄炎の発症機序を解明するためには,その他の炎症性サイトカイン刺激によるMMPs産生に関する研究を行うことが必要である.また,MMPsはマトリックス代謝に関与する一連のプロテアーゼ群であり,複雑なネットワークを形成していることから,さらに歯髄の炎症における他のMMPsの調節機構に関しても検討するとともに細胞分化に関連し検討していく必要ある.
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