現在の病院歯科におけるリスクマネージメントは、実際に起こった医療事故のみを対象に調査し、解析されている。しかし、日常臨床上のヒヤリハット等の潜在的要素や、その原因となる心理的ストレスとの関連性まで、考慮されていない。本研究は、術者の心理的ストレスをモニタリングする装置を開発し、医療事故に繋がるヒヤリハットとの関連性を明らかにし、新たなリスクマネージメントを提言することを目的とした。特に、臨床研修教育に取り入れることにより、心理的ストレスのマネージメントという重要かつ新たな教育が可能となると考えた。 歯科治療時のリスクマネージメントは特に大学病院歯科において系統的に行われるようになり、そこでは、医療事故と術者の心理的ストレスとの関連性についても調査されている。しかし、実際に起こった医療事故の原因究明に主眼が置かれ、日常臨床上のヒヤリハットなどの潜在的要素や、その原因となる心理的ストレスとの関連性まで考慮されているとはいえない。そこで、これらの関連性を明らかにするためには、臨床現場における術者の心理的ストレスの連続評価をモニタリングする装置を開発した。 開発した測定装置には、レーザー光を用いたレーザー血流計に、光ピックアップ読み取り技術を応用した高性能小型レーザー血流センサーを使用した。この血流計は、末梢皮膚血流量を計測するものであり、左手第二指や耳介に装着し交感神経性の刺激を加えた場合、血流量が一過性に減少する様子(交感神経性皮膚血流反応)を正確にかつ簡便に計測可能であることが示された。今後は、歯科治療時の術者及び、患者の心理的ストレスが血流に及ぼす影響を明らかにし、ストレスを定量化していく。
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