研究課題/領域番号 |
23792213
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
加来 咲子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (60584589)
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キーワード | 歯根膜 / メカニカルストレス / プライマリー・シリア |
研究概要 |
機械的刺激は歯根膜の改造、恒常性維持に大きく寄与し、これまでその応答のメカニズムについて、いくつもの受容機構、経路が提唱されてきた。しかしながら、これらの基礎的知見は未だ我々が臨床の場において遭遇する数多の事象を明瞭に説明するには至っていない。近年、毛様で非運動性の細胞小器官であるプライマリー・シリアが視細胞、腎細胞等におけるメカノ・レセプターとして機能している事が明らかとなった。さらにプライマリー・シリア表面におけるシグナル分子受容体の集積や、プライマリー・シリア形成不全に起因する先天疾患も報告され、その重要性が注目されている。この研究の目的は機械的刺激に感受性の高い組織として代表的な歯根膜におけるプライマリー・シリアのメカノ・レセプターとしての機能、さらにプライマリー・シリアを介した歯根膜組織の維持機構について明らかにすることである。 これまでの解析では、ラットの歯根膜組織上ではプライマリー・シリアを検出している。興味深いことにプライマリー・シリアの発現率は歯根膜中の部位によって異なっていた。これが歯根膜の機能、特性及ぼす影響についても考察して行きたい。一方、ヒト歯根膜由来細胞においてはプライマリー・シリア検出に至っていない。これは一般的な培養条件下ではヒト歯根膜細胞はプライマリー・シリアを形成していない可能性を示唆している。プライマリー・シリアにおけるシグナル受容体の集積や、BMPシグナリングが発生段階においてプライマリー・シリアの形成に重要な役割を果たしている。現在、培養条件や増殖因子がプライマリー・シリアの形成に及ぼす影響について検討を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載の通り、培養条件下でのヒト歯根膜細胞においてはこれまでのところプライマリー・シリアの検出に成功していない。これについてはヒト歯根膜細胞の特性か、もしくは培養条件等がプライマリー・シリアの形成に影響を及ぼしている可能性が考えられ、これについて検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、ヒト歯根膜細胞においてのプライマリー・シリアの検出に成功しておらず、培養条件をふくめ、これについて検討を進めている。現状では、コラーゲンゲルを用いた3次元培養法、ならびに増殖因子の添加による影響の解析を行なっている。プライマリー・シリアの検出が可能となり次第、下記の解析を行う予定である。 1.プライマリー・シリア欠失ヒト歯根膜細胞の作製。RNAi法によってporalis遺伝子の発現を抑制し、プライマリー・シリアの生成を阻害する。 2.プライマリー・シリアによる骨新生/骨吸収のバランスへの影響。歯根膜維持機構の代表的現象である骨新生/吸収バランスの側面からプライマリー・シリアによる歯根膜組織の維持機構への関与を検討する。機械的刺激による骨芽細胞マーカー、破骨細胞マーカーの発現について、プライマリー・シリア欠失歯根膜細胞を用いて解析を行い、コントロールとの比較を行う。 3.プライマリー・シリアによる歯根膜特異的な遺伝子発現の影響。歯根膜特異的に発現が報告されている遺伝子(i.e. S100-A4, Periostin, Asporin, Col12a1)について、機械的刺激に対するプライマリー・シリアを介したこれらの遺伝子発現を解析する。これらの遺伝子は基本的に石灰化阻害因子であると考えられており、歯根膜自身の非石灰化機構について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用については、細胞培養に必要な費用(60万円)、免疫染色に用いる抗体(30万円)、遺伝子解析費用(60万円)、人件費(40万円)を予定している H23-24年度にかけて産休、育休を取得したため、その間使用しなかった研究費は翌年度への繰越とした。
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