現在、インプラント治療の成功率は非常に高く5年経過後でも95%を越えるといわれている。一方、国内で1000万人が罹患しているといわれる骨粗鬆症はインプラントの危険因子と考えられており、重度であればインプラント治療適応外となり、適応となっても骨粗鬆症患者における骨量減少と骨強度低下は治癒期間やインプラント治療自体の成否に大きく影響する。骨粗鬆症患者における骨質、骨量の低下はエストロゲンの分泌低下によるサイトカイン産生増加が、破骨細胞の活性を上昇させ、骨吸収が骨形成を上回ることによっておこる。骨粗鬆症治療薬としてのエストロゲン様薬物は乳癌を惹起する可能性や、血栓症を引き起こすなどの副作用により有用性が乏しいとされている。また骨吸収抑制により骨代謝を低回転に維持するビスフォスフォネート製剤は、骨粗鬆症治療のゴールドスタンダードとされているが、顎骨壊死との関与も報告されており、骨代謝を低回転に維持することが骨に与える影響についての検証も十分になされていない。本研究は骨粗鬆症モデル動物を使用し、HDACiを用いたエピジェネティックな骨代謝回転制御が骨粗鬆症患者における骨量を増加させるため、もしくは早期にオッセオインテグレーションを確立するために有効かどうかを検証することを目的とする。上顎骨窩洞の窩洞閉鎖治癒において窩洞形成21日後の標本でOVX直後でのHDACI投与群ではOVX群に比較して有意な骨欠損治癒の促進を示す像が得られた、脛骨窩洞治癒においては、骨髄側に変化は見られず、また欠損閉鎖治癒像には有意な差は見られなかったが、骨表面側においてHDACI投与群では骨造成による窩洞周囲の骨の肥厚が観察された。
|