研究課題/領域番号 |
23792215
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
川崎 真依子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (40584587)
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キーワード | HSP27 / 骨芽細胞 / アポトーシス / 細胞移植 / 骨増成 |
研究概要 |
本研究の目的は抗アポトーシ能が期待されるHSP27を用いて、効果的な骨増生法を開発することである。第一段階として、HSP27の骨芽細胞分化に及ぼす影響を解析するためにHSP27過剰発現ベクターの構築を行った。HSP27の過剰発現により、骨芽細胞株(MC3T3-E1)においてTNF-αに誘導されるアポトーシスへの抵抗能が確認された。また骨芽細胞の増殖能をMTTアッセイにより解析したところ、HSP27の過剰発現による影響は検出されなかった。さらに骨芽細胞の石灰化能へ及ぼす影響をアリザリンレッド染色によって評価したところ、HSP27の過剰発現による影響は検出されなかった。また骨芽細胞関連遺伝子(Cbfa1/Runx2、Col1a2、Alpl)の発現において抑制が認められた。以上の結果からHSP27は骨芽細胞において抗アポトーシス能を示すものの、細胞の分化増殖には影響を及ぼさない可能性が示唆された。 これらの知見を細胞移植法に応用するために、移植細胞の初期挙動についての解析を行った。温度応答性細胞培養皿上にてヒト骨由来細胞をシート状に培養し、細胞シートを免疫不全ラット(F344/NJcl-rnu) 頭蓋骨骨膜下へ移植し、移植細胞の増殖能、アポトーシス並びにHSP27の発現を免疫組織化学的に評価した。移植部位において、移植後3日よりPCNA陽性細胞が認められ、5日目に最大となった。また、移植後5日には移植部への血管の侵入が認められた。移植細胞のアポトーシスはTUNEL染色にて評価した。移植細胞のTUNEL陽性細胞率は移植後3日に最大となった。更に、移植細胞ではHSP27の産生が認められ、移植3日後に最大となり、その後産生は低下した。以上の結果より、一定数の移植細胞がアポトーシスによって失われていること、初期の移植細胞においてHSP27の発現の更新が認められることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、HSP27が骨芽細胞に及ぼす影響の解析は順調に進んでいる。また上述の通り一定の成果を上げている。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度までは、HSP27が骨芽細胞に及ぼす影響について、一過性過剰発現ベクターを用いてその影響の解析を行った。しかしながら一過性過剰発現ベクターの効果が約7日程度であるのに対し骨芽細胞の分化、石灰化には3-4週間を要する。このために実験の後期では過剰発現の状態は維持されていない。従って現在、恒常性発現ベクターの構築を行い、その解析を進めているところである。さらにHSP27過剰発現細胞の抗アポトーシス能、石灰化能への影響を動物実験にて行う予定である。更に、PTD法を用いて導入するHSP27タンパクの精製についての準備を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
PTD法を用いて導入するHSP27タンパクの精製のため、実験動物の購入および薬品(抗体・酵素・試薬)、ガラス・プラスチック器具に前年度未使用研究費を含めて使用する計画である。
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