研究概要 |
本研究の目的は抗アポトーシ能が期待されるHSP27を用いて、効果的な骨増生法を開発することである。前年度に、第一段階として、HSP27の骨芽細胞分化に及ぼす影響を解析を行い、HSP27は骨芽細胞において抗アポトーシス能を示すものの、細胞の分化増殖には影響を及ぼさない可能性が示唆された。今年度は、さらに、HSP27過剰発現骨芽細胞のラット頭蓋骨欠損部への移植野におけるアポトーシスをTUNEL染色にて検出したところ、3および7日後においてはHSP27過剰発現によりTUNEL陽性細胞率が有意に減少していた。細胞増殖能を示すPCNA陽性細胞率は移植7日後においてHSP27過剰発現細胞が有意に高値を示した。しかしながら、移植4, 6週後の移植野における新生骨量をマイクロCTにて解析したところ、両群間において有意差は認められなかった。本研究では抗アポトーシス遺伝子であるHSP27を移植骨芽細胞に導入して、より効果的な骨増成を期する試みを行ったが、細胞の生存率は向上したものの、最終的な新生骨量に変化は見られなかった。骨形成能を有する細胞の移植は盛んに試みられているものの、本研究結果でも見られるように、その効果については依然として議論が分かれるところである。移植細胞の生存率を改善することによる効率的な骨増成を今後臨床応用に直接結び付けるためには、より長期的な解析と、骨形成の場における移植細胞の直接的な寄与についても検討することが必要であろう。
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