研究概要 |
(1)成長板軟骨細胞上に発現するEphA4のリガンド分子の探索 申請者らは以前の研究で、受容体型チロシンキナーゼであるEphA4が成長板軟骨細胞、特に肥大軟骨細胞から産生されていることを明らかにした、そして同分子が骨形成に重要であることも既に見出していたので、本年度はEphA4に結合するリガンドを探索した。プロテインチップを用いた網羅的インタラクトーム解析により数多くのタンパク質が候補に上がってきたが、その中でもガレクチン(LGALS)ファミリーの複数のメンバーには特に目を引かれた。ガレクチンとはその名の通り糖に結合する小タンパク質、レクチンに分類される分子群である。10種を超えるメンバーからなるLGALSファミリーであるが、今回実にLGALS-1, 2, 3, 7, 8との結合を示すデータが得られたのである。中でもLGALS-1に関しては、ノックアウトマウスで末梢神経の神経突起伸張異常が認められるなど、神経発生で重要な役割を果たすEphA4との関連が強く推察された。 (2)LGALS-1の軟骨細胞における産生の解析 そこで、正常肥大軟骨細胞と増殖軟骨細胞をそれぞれ単離し、トランスクリプトーム解析によりmRNA発現を網羅的に解析したところ、どちらの軟骨細胞でもLGALS-1が発現していることが明らかになった。また興味深いことに、LGALS-1の発現は肥大軟骨細胞でより強かった。この所見は2008年の報告 (Marsich et al., 2008)に一致し、当該論文にはLGALS-1は軟骨細胞の肥大化を促進したとの記載もある。以上の知見を申請者が過去に得た所見と総合すれば、LGALS-1とEphA4 のリガンド・レセプター相互作用が、内軟骨性骨形成に重要な役割を演じていることが強く推察されよう。
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