平成24年度に作成した口腔内診査用紙,インプラント体の評価シートおよびアンケートの評価プロトコルを用いて,引き続き当科で口腔インプラント治療を受けた高齢者の追跡調査を行った.調査対象 61名のうち,13名(平均年齢71.4歳,男性7名,女性6名)が体調不良を理由に来院していなかった.13名のうち,平成25年度に新たに来院が途絶えた3名は,男性1名,女性2名であった.このうち追跡調査ができたのは69歳の女性1名で,認知機能の低下によって来院困難となっていた.口腔内の清掃状態は悪く,Plaque control recordは57%であったが,インプラント体周囲には著明な炎症は無かった. また,岡山市内の要介護高齢者施設にて全数調査を行った.対象は,平成25年7月に要介護高齢者施設の通所サービスを利用した要支援・要介護高齢者および要介護高齢者施設に入所している要介護高齢者のうち,研究参加に同意が得られたものとした. 解析対象は216名(平均年齢:82.9±9.4歳,男/女:63/153名)となり,これらを対象に,口腔内診査,介護・医療記録調査(全身疾患,Barthel Index,臨床的認知症尺度[CDR-J],摂食量,口腔ケアの自立度)を行った. 対象の平均残存歯数は,9.7±10.0本,平均機能歯数は24.7±6.9本であった.また,216名の内うち105名が認知症と判定され,軽度が51名,中等度が20名,重度が34名であった.口腔内にインプラント体を有する高齢者は1名しかおらず,過去に下顎無歯顎にブレードタイプのインプラント義歯を装着していたが,脳梗塞の後遺症で要介護状態となった後に除去したとのことであった.現在は下顎右側第一大臼歯部にブレードタイプのインプラント体が1歯分残存し,義歯の支台歯となっていた.インプラント体周囲にはプラークが付着し,インプラント体が一部歯肉から露出していたものの,動揺は無かった.今後,これらの成果を論文発表する予定である.
|