研究課題
本研究では,咬合回復モデルを使用して8方向放射状迷路課題を用いた行動学的評価と海馬錐体細胞の組織学的評価を行い、同時に実験動物の血中corticosterone濃度を計測することで,臼歯抜歯後の実験用義歯装着により生じると考えられる慢性ストレスが実験動物の高次脳機能に与える影響について明らかにすることを目的とした。実験の結果,3群のCorticosterone Levelを計測において有意差を認めなかった。実験用義歯の装着と臼歯抜歯は実験動物にとって慢性ストレスとならないことが推察された。また,迷路実験のエラー数は3群ともに経時的に減少傾向を示し,群間に有意差を認めた。組織学的評価においてCA1領域における細胞密度は,臼歯抜歯群は他2群[義歯装着群,対照群]よりも低く,3群間に有意差を認めた。また,CA3領域における細胞濃度の比較においては,臼歯抜歯群と義歯装着群は対照群よりも有意に低かった。本研究の結果,これまでの先行研究に従うように,臼歯抜歯による咬合支持の喪失は空間記憶能の減退を引き起こし,その後の実験用義歯による咬合支持の回復により,空間記憶能の減退が抑制される可能性がある。また,組織学的にも咬合支持の喪失は海馬錐体細胞密度の低下を招くことが示唆された。血中corticosterone濃度を比較すると,3群間に有意差を認めなかったことから,実験終了時点において,実験義歯装着はストレッサーとなっていなかったことが示された一方,臼歯抜歯による慢性ストレスは臼歯抜歯群に認められなかった。今回のように実験終了時点のみのストレス計測では,実験過程において慢性ストレスが各群にどの程度の影響を与えたのかについては明らかにできなった。今後は経時的なストレス計測により,臼歯抜歯や咬合支持の回復が実験動物の中枢神経系に与えている影響を詳しく検証していく必要がある。
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