研究課題/領域番号 |
23792229
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
内藤 禎人 徳島大学, 病院, 助教 (20509773)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 歯学 / 生体材料 / チタン / 薬物徐放担体 / 骨代替材 |
研究概要 |
我々は生体材料として注目されつつある、チタン多孔体の骨補填材としての応用研究を手がけている。より早期での骨結合を得られる骨補填材として、チタン多孔体内部に骨形成促進効果のある物質を貯蔵させ、局所的に徐放させることで効果を発揮する薬物徐放担体としての応用を目指すこととした。 今年度の目的としては、チタン多孔体内にマイクロスフェア粒子(ポリビニルアルコールでできた粒子に薬剤を封入したもので、加水分解によって徐々に粒子が壊され、内部の薬剤が徐放されるもの)を取り込む条件の最適化であった。 それに先立ち、チタン多孔体の材料設計を手掛けた。必要な空孔径を材料表面に配置し、そこにマイクロスフェア粒子を設置する必要があるためである。 従来の我々が用いているチタン多孔体作製プロセスに改良を加えた。将来空孔となるためのスペーサーとして、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)粉末を混合させて焼成することで材料表面に所望の空孔径を形成することに成功した。また、PMMA粉末の粒子径を変化させると、得られる空孔径のサイズを制御できることがわかった。さらに、焼成条件によっては生体の骨に強度を近似させられる特性も発見した。この材料に減圧下でマイクロスフェア粒子を含浸させると、空孔内に粒子が設置されており、これを走査型電子顕微鏡で確認した。 次年度は引き続き材料設計の最適化を目指し、作製した試料を骨芽細胞との親和性を評価し、実際に動物実験(ラット大腿骨埋入試験)で効果を確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チタン多孔体の材料設計のところでやや遅れを生じてしまった。最適な材料設計を考える上で、空孔径の最適化をはかるのに時間がかかった。骨形成、骨増殖に有効なチタン表面の空孔径サイズは100~400μmと考えられている。我々のプロセスによるチタン多孔体を作製するために用いたチタン粉末は平均粒径が120μmである。このまま焼結させれば100μm以下の空孔しか得られない。そこで、将来、焼成後に空孔となるスペースを保持させるスペーサーを用いることとした。このスペーサーの材料選択には最終的にPMMAを選ぶまでにさまざまな条件で実験をおこなったため時間を費やしてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
現在は多孔体の空孔内に薬剤を設置させる条件の検討を始めたところである。当初の予定ではここでもっとも時間も労力もかかり、1年目の秋ごろから検討を開始できると考えていた。しかし、材料設計におもわぬ時間がかかり、現在実験を開始したところである。 今後は、現在進行中の薬剤設置条件の検討をin vitroで評価する。骨芽細胞との反応性をオステオカルシンやアルカリフィスファターゼ活性などの骨形成マーカーによって評価する。さらに、疑似体液中に試料を浸漬し、チタン表面のアパタイト析出能を評価する。 最終的には、ラット大腿骨に試料を埋入し、組織切片を作製、骨接触率や新生骨面積の測定を行い、組織学的に評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越金が発生した理由としては実験の遅れが挙げられる。動物実験を想定していたためである。また、細胞培養系の実験も遅れてしまったため繰越金が発生した。 計画としては、現在進行中の薬剤設置条件の検討をin vitroで評価する。骨芽細胞との反応性や、疑似体液中でのアパタイト析出能を評価するものである。試料にどのくらいの薬剤を設置できるか、その設置した薬剤量は適切か、徐放挙動は骨形成に関係したのか、を検討する。 その後、実際に動物実験においてin vivo評価を行う。検討条件としては、コントロール、シンバスタチンのみ使用した試料、マイクロスフェア粒子設置した試料の3通りに、それぞれの薬剤の濃度、設置量と条件が多くなる。したがって多くの実験動物が必要になると考えられる。 また、材料設計の新規性、進歩性を学会発表で行う。当初は薬剤設計を発表する予定であったが、その前段階の材料設計に関しても、チタン加工分野、歯科材料分野においては新規性のある内容であるので発表を行う。
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