本研究は、睡眠中のブラキシズムの動態を解明するために、睡眠中の顎口腔系の可視化方法の確立をさせること,また、そのシステム(6自由度顎運動測定器とポリソムノグラフ)を用いて,睡眠中の顎運動を含む,筋電・脳波などの生体信号の測定を行う事を目的に行った。 まず、上記目的のために、睡眠時顎運動測定システムの改良に時間の大半を費やしたが、6自由度顎運動測定器の精度向上を行うことができなかった。そこで、現行のシステムで、顎運動を含む,筋電・脳波などの生体信号の測定を行い、以下のことを明らかにした。 ①被験者3名を対象とし、睡眠中の覚醒反応時や体動の際にどのような顎運動が生じているのかを検討した。その結果、睡眠中に覚醒は平均13.3回生じ、そのうち85.7%が体動を、77.5%が睡眠時ブラキシズム様の顎運動を伴っていることを明らかにした。臨床的に筋活動による顎口腔系への影響を評価するためには、従来解析から除外されてきた覚醒反応時においても高い頻度で何らかの顎運動が生じていることを考慮に入れる必要があることが分かった。 ②被験者12名を対象とし、睡眠時ブラキシズム時のクレンチング時の顎位と咬筋活動との関係を検討した。睡眠時ブラキシズムイベント中に、顎運動が2sec以上静止する区間をクレンチング区間とし、咬頭嵌合位から0.5mm以内に顎位があるものは86回(76.1%)、1mm以上離れた顎位にあるものは17回(15.0%)認められた。左右咬筋活動量の和は1mm以内にあるものが29.2±22.7%MVC、1mm以上離れた顎位にあるものが16.0±12.7%MVCで、前者が有意に大きく(P≦0.01)、また、クレンチング区間の持続時間に有意な差は認められなかった。睡眠時ブラキシズム時のクレンチングは、咬頭嵌合位付近だけでなく、咬頭嵌合位から1mm以上離れた偏心位でも生じてる事が分かった。
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