研究課題/領域番号 |
23792233
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
神野 洋平 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40507779)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 骨補填材 / スタチン |
研究概要 |
現在、インプラント治療は、歯科治療において益々普及している。インプラント体埋入のコンセプトも外科主導から補綴主導へ移行し、埋入できる部位にインプラント体を埋入するのではなく、補綴装置を装着したい部位に埋入するというパラダイムシフトがおこっている。それに伴い、骨増生の重要性が高まっており、我々の研究室では、本学工学部とポリ乳酸スポンジを用いた新規骨補填材の開発を開始した。 スポンジ状骨補填材は、様々な骨増生の術式に適応可能である。本研究では特に上顎洞底挙上術への適応に着目した。骨補填材としての予知性の向上はもちろんのこと、操作性の向上を実現し、上顎洞底挙上術における骨補填材の第一選択を目指している。 (1)予備実験(コントロール群)として現在歯科治療で臨床応用されている材料をラット頭蓋骨欠損部に補填した。(セラタイト、テルプラグ・厚生労働省によって歯科臨床での使用を認可済)若干の炎症が認められたものの、骨新生も認められた。(2)高分子を用いた新規骨補填材としてPLLA(ポリ乳酸)に連通気孔をもたせたもの、PCL(ポリカプロラクトン)に連通気孔をもたせたものを作製し、ラット頭蓋骨欠損部に補填した。結果はPLLAでは骨新生は認められなかったが、炎症所見もなく、連通気孔に線維芽細胞様細胞の侵入が認められた。これは、PLLAが生体内では分解が遅く、破骨細胞による試料の分解が行われなかったことが考えられた。また、同時にPLLAは生体内で炎症を惹起しないことが示唆された。(3)連通気孔を持たせたβ-TCP骨格にPLLAを薄くコーティングした試料を作成した。現在動物実験を終え、切片の切り出しを行い、今後観察予定である。しかし、ラット屠殺時の頭蓋骨は炎症を起こし、腫脹が認められたためさらなる材料の改善の必要性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験は計画通り進んでいるが、現時点では良好な骨補填材の開発には至っていない。しかし、臨床に使用されている骨補填材のvivoでの現状や注目すべき高分子骨補填材の現状が実験によって明らかとなり、今後の方向性がクリアーになってきたという点では達成度は高いと考えている。現状を把握した上で今後の展開に生かしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
新規骨補填材を開発してはいるが、顕著な骨新生を起こすような良好な結果を導く骨補填材の開発には至っていない。今後はβ-TCPの骨格にPLLAをコーティングした試料から、PLLA中(スポンジ状)の内部に均等にβ-TCP粒子が分散している試料に、複合方法をシフトし、より炎症が少なく、骨の新生を起こす骨補填材を作製を目指す。現段階では、試作品は完成しており、今後動物実験を繰り返し改善をはかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に引き続き動物実験を行っていく必要がある。そして、試料の開発のためにも材料調達の資金が必要である。今年度は研究の最終年度となるため、研究の成果を関連学会で発表し、意見交換を行う予定である。今後いいデータがが出た場合は、国際誌への投稿を目指したい。
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