現在、インプラント治療は、歯科治療において益々普及している。インプラント体の埋入のコンセプトも外科主導から補綴主導へ移行し、埋入できる部位にインプラント体を埋入するのではなく、補綴装置を装着したい部位に埋入するというパラダイムシフトがおこっている。それに伴い、骨増生の重要性が高まっており、我々の研究室では、本学工学部とポリ乳酸スポンジを用いた新規骨補填材の開発を行った。スポンジ状骨補填材は、様々な骨増生の術式に適応可能である。本研究では上顎洞底挙上術への適応に着目した。骨補填材としての予知性の向上はもちろんのこと、操作性の向上を実現し、上顎洞底挙上術における骨補填材の第一選択を目指して実験を行った。実験の①~③は昨年度の概要に記載済み。 ④高分子化合物のPLLA(ポリ乳酸)に連通気孔を付与した材料(実験②で生体適合性を確認済み)にβTCP、HAを封入したものを作製し、ラット頭蓋骨および頸骨骨欠損部に填入した。無機成分の封入により、実験②と比較してより多くの細胞の侵入を達成することができた。 ⑤実験④で作製したスポンジ状骨補填材に、骨新生の効果が報告されているスタチンをさらに封入した試料を作製し、ラット頸骨骨欠損部に填入した。実験④よりさらに、試料内部への骨新生を達成することができた。 今回開発した、材料(複合体)は骨補填材として有用であり、臨床応用に向けさらなる研究を続ける意義のある研究であると考えている。
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