研究課題/領域番号 |
23792234
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
丸田 道人 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (40507802)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アパタイトセメント |
研究概要 |
アパタイトセメントの粉末部としてはリン酸四カルシウムとリン酸水素カルシウムの等モルタイプを選択した。市販粉末を遊星式ボールミルにて粉砕し、TTCPは平均粒径10μm、DCPAは平均粒径1.4μmに調製した。TTCP,DCPAおよびTTCPとDCPAを等モルで混合した粉末を充填したカラムにオゾンを4 L/minで4時間通気させ、粉末のオゾン処理を行った。粉末に対するオゾン処理効果およびオゾン処理がセメントペーストの練和性に及ぼす影響を検討した。セメント広がり面積によるぬれ性の検討を中心に行った。その結果、さらに必要に応じて粉末X線回折、SEM等の分析も行った。オゾン処理後の濡れ性の評価にはL/P比0.3、0.4、0.5に調製したオゾン処理・未処理セメント粉末スラリーを用いた。測定は0.2mLのセメントペーストをシリンジからガラス板の上に出し、ガラス板と重りで圧接して広がった面積の測定によって行い、その面積をNIH Image Jを用いて測定した。また、オゾン処理の計時的安定性も検討した。L/P比一定試料での比較では未処理粉末に対してオゾン処理粉末は有意にセメント広がり面積が大きく、さらに処理後2週間の粉末は処理直後と比較して有意差が認められなかった。これによりオゾン処理は粉体の濡れ性向上に有効な手段であり、処理後も安定してその効果が持続することが明らかになった。オゾン処理前後の粉末X線測定結果からはオゾン処理によるセメント粉末の相変化は認められなかった。さらにオゾン処理が機械的特性に与える影響をダイアメトラル引張強さ試験により検討したところ、処理群・未処理群に有意差は認められなかった。これによりアパタイトセメント粉末のオゾン処理は粉末の濡れのみに効果があり、その他の機械的特性には影響を全く与えない理想的な処理方法であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においてはセメント粉末表面の水酸基を増大させることによってセメントペーストの練和性を損なうことなく練和液の減水を行い、セメント硬化体のミクロ気孔を低減化させることによって圧縮強さを150%に増大した高強度アパタイトセメントを創製することを目的としている。本年度の研究結果より、オゾン処理が粉体に与える影響が減水硬化のみである事が明らかになった。申請書で計画した3つの検討(1)アパタイトセメント粉末のオゾン処理(2)オゾン処理粉末の分析およびペースト練和性の評価(3)オゾン処理がアパタイトセメントの基本特性に及ぼす影響の検討はすべて完了しており進捗状態に問題はない。また、得られた結果についても当初の計画通りであり新たに研究計画を変更する必要性は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は次の研究を行う。1.アパタイトセメント硬化体の細胞接着・増殖・分化実験(細胞への影響を検討)アパタイトセメント硬化体に骨芽細胞様細胞を播種し、10%牛血清を含むαMEM 中で一定期間培養します。骨芽細胞の細胞接着性、細胞増殖(MTT 法)および分化能(アルカリフォスフォターゼ活性の測定、ELISA 法によるTypeIコラーゲンおよびオステオカルシン発現量の定量化)を検討します。対照試料としてはオゾン処理を伴わないTTCP-DCPA系アパタイトセメント(平成23年度に調整法を確立した粉末でオゾン処理を行わないもの)を用いる。2.アパタイトセメント硬化体の実験動物を用いた組織学的初期評価実験動物(ラット)の頭蓋骨にクリティカルサイズ以上の骨欠損を形成する。実験動物の骨欠損部にてオゾン処理アパタイトセメントを硬化させ、骨欠損部を再建する。移植後2、4週目に試料を周囲組織と一塊に摘出し、アルカリフォスフォターゼ活性、オステオカルシン産生をタンパクレベルにて評価するとともに、骨の形成をと骨梁構造解析装置(現有設備:X線CTスキャナSkyScan)を用いて定量的に解析する。動物実験に関しては所属機関付属施設である福岡歯科大学アニマルセンター規定に従い行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物細胞実験用試料作成のためモールド(テフロン・ステンレス製)、細胞実験用試薬(MTT、アルカリフォスファターゼ測定用キット、ELISAキット等)、動物実験用器具、病理組織標本作製にかかる薬品を購入する。また、実験動物の飼育費(所属機関付属施設である福岡歯科大学アニマルセンター規定に従う)。また、成果発表用英文校正費用、成果発表用旅費を申請する。なお、1品50万円を超える機器の購入予定はない。
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