研究概要 |
本研究の目的は、セメント粉末のオゾン処理により粉末表面の水酸基を増大させることによってセメントペーストの練和性を損なうことなく練和液の減水を行い、セメント硬化体のミクロ気孔を低減化させることによって圧縮強さを150%に増大した高強度アパタイトセメントを創製することである。しかしながら、オゾンは強い酸化力で最近細胞膜を破壊し殺菌性を有することが知られている。本年度の実験では、前年度に確立したアパタイトセメント粉末のオゾン処理法が細胞に与える影響を評価した。前年度に確立したオゾン処理法で処理したアパタイトセメント硬化体に細胞実験を行い初期接着性。細胞増殖性等の検討を行った。 アパタイトセメントの粉末部としてはリン酸四カルシウム(TTCP:太平化学産業)とリン酸水素カルシウム(DCPA:J.T.Baker)等モル混合タイプを選択した。上記市販粉末を遊星式ボールミルにて3時間粉砕し、TTCPは平均粒径10μm、DCPAは平均粒径1.4μmとなるように調製した。得られたTTCP,DCPAを充填したカラムにオゾンを4 L/minで4時間通気させ、粉末のオゾン処理を行った。また、あらかじめ等モル混合した粉末の処理も同様に行った。得られた粉末を滅菌水にて練和し、滅菌した10mm径の円形試料作成テフロンモールドに充填し、37℃相対湿度100%で24時間養生させ試料を作成した。 骨芽細胞の細胞接着性、細胞増殖能を測定した。その結果、オゾンによる表面改質を受けた試料はその流動性や機械的性質が著しく向上するのに対して、細胞接着性、増殖性に全く影響を与えないことが明らかになった。また、著しい初期炎症等の発生がないことを組織学的に確認した。以上により、本研究により開発された粉末オゾン処理方法を用いることにより、減水材を使用することなく、流動性を最大2倍、機械的強さを最大200%向上させた。
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