日常の歯科補綴臨床において、義歯の鈎歯、パラファンクションによる外傷歯、インプラントの対合歯に対し、異常な外力が歯根に加わり、歯周組織が損傷する症例、特にセメント質の剥離や吸収する症例によく遭遇する。そこで本研究では、歯の発生において歯胚の歯原性上皮細胞に着目し、これを利用したセメント質の組織再生に取り組んでいる。 昨年度、この上皮細胞とセメント芽細胞株をコラーゲンあるいはハイドロキシアパタイトキャリアに播種し、in vitroにおける細胞の遺伝子および蛋白質発現について解析を行った。本年度はさらにこの細胞-担体複合体を免疫不全ラットの腹腔内に移植し、再生組織の組織解析を行った。HEおよび免疫組織解析の結果より、移植15週目に骨および軟骨様組織の再生が確認できた。しかしながら、象牙質やセメント質、歯根膜などの組織形成は認められなかった。このことから、細胞のキャリアの種類、キャリアへの細胞の播種方法および移植期間について更なる検討が必要であることが示唆された。
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