研究概要 |
メカニカルストレスは骨組織における重要な代謝調節因子であるが、その分子メカニズムは不明な点が多い。AMP-activated protein kinase(AMPK)はαβγのヘテロ3量体から成るセリン-スレオニンキナーゼの一種であり、一般的に細胞内エネルギー恒常性や極性等の重要な調節因子として知られている。これまでの研究で、マウス骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞およびマウス初代骨芽細胞の分化過程において、AMPK活性が低下することを確認した。また、AMPK活性化剤によりAMPKの活性を維持させるとRUNX2および骨芽細胞分化マーカーの発現が低下し、骨芽細胞の分化が著明に抑制されることが分かった。 そこで、メカニカルストレスによるAMPK活性の誘導と骨芽細胞分化シグナルとの関連を明らかにするために、骨芽細胞に低周波超音波(LIPUS)刺激を加えた。LIPUSは骨折治療に応用されており、骨形成を促進して治療期間を短縮させる効果があることが知られている。LIPUS刺激(30mW/cm2, 20分間)により、MC3T3-E1細胞においてAMPK活性の低下が認められた。この結果から、LIPUS刺激がAMPK活性を低下させることにより、骨芽細胞の分化を促進する可能性が考えられた。 LIPUS刺激による、骨芽細胞におけるRUNX2や骨芽細胞分化マーカー発現の変化は研究途中であるが、明確な結果が得られておらず、継続して調べていく予定である。また、AMPKノックアウトマウスや、AMPK活性化剤をマウスに投与した際のvivoにおける骨形成の評価も行う予定である。
|