研究課題/領域番号 |
23792243
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
古屋 純一 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (10419715)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 咀嚼 / 嚥下 / 補綴 / 義歯 / 内視鏡 / 造影 |
研究概要 |
平成23年度は、研究実施計画に記した通り、欠損を有する患者を対象に研究を行う前に、評価法の確立に重要となる事項について、健常有歯顎者6名を対象に研究を行った。特に、自由咀嚼時のビデオ造影検査による咀嚼機能評価、ビデオ内視鏡検査による咀嚼機能評価と混合能力評価の関連について検討を行った。また、これらの二次元的な評価を補完することを目的として、一部の被験者でCTによる三次元的評価と舌圧測定による機能的評価を行い、妥当性を確認した。 自由咀嚼時の咀嚼様式の変化について、ビデオ造影検査を用いて咀嚼機能の定性的評価を行った。評価項目は、咀嚼回数、食塊深達度、嚥下反射開始時の食塊先端の位置および量とした。また,嚥下の容易さに関する主観的評価を行った。咀嚼回数は、いつも通り摂食させた場合よりも、よく噛んで摂食させた場合に増加した。また、食塊の深達度および嚥下反射開始時の食塊の位置と量は、いつも通りと比べてよく噛んでの場合では、喉頭蓋谷以下への食塊の到達が増加し、嚥下反射開始時に中咽頭以下に食塊が到達する割合が増えていた。主観的評価の結果は、いつも通りに比べてよく噛んでの場合に上昇し、よく咀嚼した方が飲み込みやすいという傾向が観察された。 いつも通り自由に摂食させた時の中咽頭の食塊形成度と、ガムを用いた混合能力評価との関連を検討した。食塊形成度は、緑と白に2色米飯を用いて経鼻的に挿入した内視鏡によって直接観察して計測した。混合能力の評価には、咀嚼力判定ガムを用いて、色彩色差計によって色調の変化を測定した。両者の間には正の相関関係が認められ、口腔における混合能力の高さは、咀嚼による中咽頭の食塊形成の程度の高さと関連していることが明らかとなった。 以上より、補綴歯科治療による咬合接触の回復や咀嚼機能の回復は、食塊形成能力の改善に肯定的な影響を及ぼし、円滑な嚥下に通じる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビデオ造影検査およびビデオ内視鏡検査による咀嚼機能評価法については、まだ十分に検討されていない部分も多いため、欠損を有する患者に対して実施する際に重要となる部分について、正常例である健常有歯顎者における自由咀嚼時のメカニズムを十分に理解する必要があり、それを中心に研究を行った。特に、ビデオ造影検査による定性的・定量的な咀嚼機能評価法については、不十分な点が多いため、研究期間の多くを割いた。ビデオ内視鏡検査を用いた咀嚼機能の定性的および定量的評価法については、すでに確立した手法を有しているが、従来型咀嚼機能評価法との関連がまだ十分には明らかになっていない。補綴歯科治療による咀嚼機能回復の効果を検討するためには、従来型咀嚼機能評価法による評価が不可欠であるため、ビデオ内視鏡を用いた咀嚼機能評価法との関連について検討を行った。また、咀嚼筋筋電図との同時評価、健常有歯顎者における口蓋の被覆による影響についても、研究を開始している。 以上より、平成23年度については、研究の達成度はおおむね順調と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、ビデオ造影検査による定性的・定量的咀嚼機能評価法の確立を急ぐため、引き続き、健常有歯顎者における検討を行う。また、その一方で、すでに確立されているビデオ内視鏡検査による定性的・定量的咀嚼機能評価法を用いて、欠損を有する患者を対象にした研究を開始する。欠損の種類は、口腔と咽頭の構造が大きく変化する全部床義歯装着者を対象とすることで、被験者間の要因が多くなることを回避し、研究の再現性が確立されるよう配慮する。また、ビデオ内視鏡検査およびビデオ造影検査のどちらの評価法においても二次元的な評価に限定されているため、それを補完することを目的として、一部の被験者で行っている咽頭の三次元的評価をCTによって用いて行い、二次元的評価の妥当性を引き続き確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費については、ビデオ造影検査の画像分析のため、高精細で撮影可能な静止画像撮影用カメラを新規に購入し、ビデオ造影検査による咀嚼機能評価に用いる。また、ビデオ造影検査およびビデオ内視鏡検査などを同時期に行うことを考慮して、研究における画像処理に必要な専用PCの購入や、画像処理ソフトウェアの購入を検討する。研究成果については関連学会において発表し、また関係する学会に参加して情報収集を行う。
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