研究課題/領域番号 |
23792243
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
古屋 純一 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (10419715)
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キーワード | 咀嚼 / 嚥下 / 有床義歯 / 食塊形成 / リハビリテーション / 内視鏡 / 造影 |
研究概要 |
平成24年度は、まず、補綴装置による口蓋の被覆が咀嚼・嚥下機能に与える影響について、ビデオ内視鏡検査を用いて健常有歯顎者を対象に実験を行った。口蓋の被覆に対する経時的な順化を、ビデオ内視鏡検査によって観察したところ、口蓋床装着直後には、咀嚼による食塊形成能力は有意に低下し、また、ガムを用いた咀嚼効率、嚥下の容易さに関する主観的評価も有意に低下した。その後、装着7日後には、口蓋床装着への適応によって、食塊形成能力は有意に回復し、嚥下の容易さも装着前と同等に回復した。しかし、咀嚼効率は装着直後と有意な差は認められず、また、咀嚼回数は装着直後よりも有意に上昇していたことから、口蓋の被覆に対する順化は、生体の代償性の変化であることが示唆された。 次いで、ビデオ造影検査を用いた咀嚼機能評価法について、食塊搬送の観点から、昨年度に引き続き健常有歯顎者を対象に実験を行った。その結果、咀嚼意識を強化して摂食を行わせた場合には、口腔から咽頭への食塊輸送である第二期輸送の出現を時間的に遅延させ、また、嚥下反射の開始も有意に遅延することが明らかとなった。 また、アイヒナーC3の欠損を有する患者を対象として、口腔における補綴治療が嚥下機能に与える影響について、ビデオ造影検査による咀嚼・嚥下機能評価を用いて実験を行った。その結果、有床義歯の撤去は、口腔および咽頭における食塊形成と食塊搬送を変化させ、嚥下反射前の下咽頭領域への食塊の早期侵入を有意に認めることが明らかとなった。よって、補綴治療は口腔の咀嚼機能だけではなく、咽頭の嚥下機能にも影響を及ぼす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビデオ内視鏡検査による咀嚼機能評価法については、咀嚼筋筋電図との同時評価、健常有歯顎者における口蓋の被覆による影響について、研究を十分に行うことができ、一部解析を行うこともできた。ビデオ造影検査による咀嚼機能評価法については、健常有歯顎者を対象に自由咀嚼時のメカニズムについて、十分な数の被験者を対象に実験を行うことができた。また、欠損を有する患者については、対象をアイヒナーC3の区分に限定することで、効率的に被験者を集めることができ、十分な数の被験者を対象に実験を行うことができた。また、本来、平成25年度に行う予定であった、これらのデータの解析を平成24年度後半からすでに一部ではあるが開始することができた。以上より、平成24年度については、研究の達成度はおおむね順調と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、これまでに採取した実験データの解析とまとめを行う。具体的には、健常有歯顎者および欠損を有する患者を対象とした、ビデオ造影検査およびビデオ内視鏡検査のデータをPCに入力し、解析ソフトを用いて動画解析および静止画解析を行い、これまでの実験結果を被験者ごとにそれぞれまとめていく。この解析は平成24年度後半からすでに開始しており、一部すでに発表も行っているが、非常に手順が繁雑であるため、全データの解析とまとめを優先して行う。その後、統計解析を行い、周辺データとの関連性、補綴装置装着との関連についても検討し、研究成果を関連学会または関連する専門雑誌において、順次発表を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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