研究課題/領域番号 |
23792245
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
小林 琢也 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (50382635)
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キーワード | 脳機能 / 無歯顎者 / fMRI / 全部床義歯 |
研究概要 |
本研究では,「歯の喪失による咀嚼障害は脳機能活動に影響を与える」との仮説のもと,3T-fMRIを用いてヒト脳内賦活部位の観察から歯の喪失の影響および口腔再建の効果を検討することを目的とした. 本年度は初年度に引き続き、若年健常有歯顎者群と高齢健常有歯顎者群において基礎的データ採取を3T-fMRIを用いて咀嚼時の脳内賦活部位の同定,歯の喪失した無歯顎者(無歯顎者群)における無歯顎状態での咀嚼を行い脳賦活部位の同定を試みた.本年度はそれに加え,無歯顎群に対して口腔機能回復を補綴治療にて行った際の脳賦活の変化について検討を行った. 観察は,義歯を装着しない状態(義歯非装着群)で咀嚼前と咀嚼後に3T-fMRIを撮像,次に,総義歯による欠損補綴後に総義歯装着した状態(義歯装着群)で咀嚼前と咀嚼後に3T-fMRIを撮像する.実験デザインは咀嚼30秒,レスト30秒を1セットとし3セットのブロックデザイン行う.撮像したデータはSPMデータ解析ソフトを用いて脳内賦活部位の同定を行った. 本年度の新たな結果は,咀嚼運動に関与する脳部位の一次感覚野,一次運動野,頭頂連合野,前頭葉などで,義歯装着群と義歯非装着群で脳機能の賦活を認めたのに対し,大脳基底核と小脳では,義歯装着群で賦活を認めたが,義歯非装着群では大脳基底核で賦活を認めず小脳の賦活の様相も異なった. このことから,歯の喪失による感覚情報入力の変化は,咀嚼時における脳賦活様相が変わること,また,義歯により咀嚼機能を回復させることで脳賦活の様相に変化を与える可能性があることが推察される.以上より,口腔機能の回復が脳機能を護る可能性があることを立証できるかもしれない重要な研究として捕らえている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯の喪失による咀嚼障害は脳機能活動に影響を与える可能性を明らかにすることを目的に本研究を行っている. その検討データには、若年健常有歯顎者群と高齢健常有歯顎者群において基礎的データ採取と歯の喪失した無歯顎者(無歯顎者群)における無歯顎状態での咀嚼を行い,無歯顎群に対して口腔機能回復を補綴治療にて行った際のデータ比較を検討している. 実験タスクには咀嚼運動を行わせており,fMRI検討を行う際に禁忌とされる頭部の動きが必ず生じてしまう.そのため,ボクセル範囲よりも小さい1mm以下の頭部動揺までを有効データとして採用し,それ以上の動揺を認めた者に関してはデータを棄却している.この棄却データが予想以上より多く、数多くのデータを取る必要性が迫られ、実験にやや遅れを認めている.また,東日本大震災後より機器の不具合が頻発し、思うようにデーターを取ることが困難であったことが実験計画より遅れを認める原因である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に集めたデータの中で頭部動揺によって棄却したデーター分を再度データ収集し,研究結果の精度を上げていく予定である.頭部動揺に対しては昨年度作製した岩手医大式頭部固定装置を用い撮像を行っていく.また,平成23・24年度に行った実験結果の解析をふまえ,歯の喪失が高次脳機能に及ぼす影響と歯の欠損に対し補綴治療を行うことでの変化について検討し,報告していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用としては,新たに収集したデータの管理を行うための記録装置や,研究成果の報告をするための経費として使用する予定である.
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