歯の欠損が生じると,食事・会話等の機能が直接的に損なわれ,結果としてこれらの患者のQoLは著しく低下する.歯の欠損に対する治療(補綴治療)はこれらの障害を改善することを目的として行われ,QoL の向上に大きな役割を担うと期待されている.本研究は,補綴治療介入前後の口腔関連Q o L ( Oral Health Impact Profile (OHIP)を使用 )を測定・比較し,補綴装置ごとのOHRQoL の向上の程度を明らかにし,歯の欠損のある患者への補綴治療介入の妥当性を実証し,補綴装置の選択を行う際に参照可能な科学的根拠を提示していくことである. 条件を満たすインプラント希望患者に対して,口頭および説明文書による調査研究に参加の協力を求めた(同意書作成).参加同意が得られた場合,治療法を説明ののち,同時にアンケート(OHIP)の回答を得た.エンドポイントに達した時点で上記のアンケートを回収し,患者の治療前・後でのOHRQoL値を比較した. 被験者は男性14名,女性22名の計36名で,終診時の平均年齢は54.7歳,平均欠損歯数は2.8本,埋入本数は1-6本であった.OHIPサマリースコア治療介入前の平均値は47.6でしたが,介入後の平均値は25.5となり,有意にサマリースコアが低下した.また,OHIPサブスケール(機能の制限,痛み,心理的不快感,身体的障害,心理的障害,社会的障害,ハンディキャップ)全てにおいても有意に値が低下した. インプラント治療介入によるOHIP値の変化量は平均22.1.で,すでに報告されている部分床義歯による変化量(15.0)と比較して約1.5倍の値であった.部分的歯の欠損に対する治療効果は,部分床義歯よりも,インプラントの方が,口腔関連QoLを指標とした場合,影響が強いと考えられた.
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