平成24年度は、生体に安全で強力な消毒剤として生活環境において使用されている抗菌性機能水であるバイオショットを,使用中の義歯に付着した口腔内微生物に対する化学的清掃に用いて市販の義歯洗浄剤とその除菌効果を比較した. 対象は,東京歯科大学補綴科に定期診査のために来院した上下顎総義歯装着者60名(平均年齢75±8才)の上顎義歯とした.右側粘膜面第一大臼歯相当部を滅菌綿棒で1cm×10回擦過したものを生理食塩水中にて撹拌し,血液平板培地に播種後に1週間嫌気培養したものをCFU計測して義歯に付着した総嫌気性菌数を算出した.義歯をランダムに群分けし,バイオショット(以下BS群),ポリデント(以下PO群)または水(以下PC群)中に10分浸漬した.浸漬および洗浄後,左側粘膜面第一大臼歯相当部を滅菌綿棒で1cm×10回擦過し,浸漬前と同様に義歯に付着した総嫌気性菌数を算出した. その結果、浸漬前の菌数はBS群,PO群およびPC群との間に統計学的有意差は認められなかった.各群における浸漬による菌数の平均減少率は,BS群74.9±22.4%,PO群80.8±14.9%,PC群22.3±28.9%であり,BS群とPC群およびPO群とPC群との間に統計学的有意差が認められた.一方,BS群とPO群との間には統計学的有意差は認められなかった. 本年度得られた結果は,生体に安全な消毒剤として生活環境の除菌や消毒に使用されているバイオショットが,義歯にバイオフィルムを形成した口腔内微生物に対しても強力な除菌効果を有することを示している.これはバイオショットを安全で強力な義歯洗浄剤として応用することを検討するにあたり、重要な意義を持つと考えられる.
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