研究課題/領域番号 |
23792254
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
青柳 裕仁 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (30460140)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 歯科用高分子材料 / 放射線 / 物性 / レジン / 劣化 |
研究概要 |
放射線照射による歯科用高分子材料(義歯床用レジンおよびコンポジットレジン)への影響に関する検討は、放射線治療による歯科用高分子材料の挙動のみならず、昨年の大震災による原子力発電所のメルトスルーによる影響、さらには将来の宇宙空間での歯科治療時の宇宙放射線などの曝露環境下においての影響など、多岐に渡る放射線による歯科用高分子材料の物性に与える影響を検討することができ、かつ、放射線耐性の歯科用高分子材料開発の基礎的なデータの採取を目的としている。特に、メルトスルーによる放射線被爆や、宇宙空間での地上以上に放射線を被曝する状態では、モノマーに対する影響が懸念され、歯科用高分子材料が十分に機能しなくなることが想定され、このことによる歯科医療の提供の困難性が考慮される。 従って本研究に関し、今年度は市販されている未開封の歯科用高分子材料に対し放射線を照射することにより、どの被曝量まで通常時と変わらず使用できるかの検討を行った。この研究の意義は、特に大震災により原子力発電所で生じたメルトスルーによる歯科用高分子材料への放射線被曝に関し、どの程度の被曝量まで市販の歯科用高分子材料が歯科治療に供する事が出来るかという一定の基準を示す事が出来たこと、さらに、その結果を震災地である福島県郡山市で発表を行ったことである。このことにより、学術的な裏付けのある歯科用高分子材料を用いた歯科治療を国民に安心して提供できる指針を国内外に示した事は非常に重要な事であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯科用高分子材料に放射線を照射する作業が、他大学へ依頼しなくてはならない点、最大1000Gyもの線量を歯科用高分子材料に照射するのに大変時間がかかる点、および、放射線照射後の歯科用高分子材料をISO 4049に基づき3点曲げ試験を行う際の実験の試験片作製および実験の困難さのため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度において達成できなかった紫外線照射や放射線発生装置(電子線)による高エネルギーγ線照射に対する評価および変色程度の定量測定を速やかに行う。また、前年度の研究で得られた研究の結果から、レジンの物性に影響を与える放射線エネルギーと放射線量域との関係が一部解明されたので、変化が認められた放射線量域の間隔を短くするような実験プロトコールを作成し、前年度と同様な実験方法により、放射線照射を行い、その後、各種測定結果の評価により、放射線量に対するレジンの物性の影響の詳細を決定する。 万一、前年度の放射線量の範囲内で変化が認められないような群が存在したならば(紫外線照射群で可能性がある。それ以外の群では、放射線耐性の工業用プラスティックの放射線量と物性変化との過去の研究結果から、本実験系の照射線量範囲内で明らかな変化が生じると推定され、さらに予備実験として現在行っている研究結果(未発表)からも、同範囲内でX線照射により変化が生じていることが確かめられている)、照射期間を長時間に延長することで、その範囲の決定に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に供する物品の購入、研究打ち合わせおよび学会発表を行うための旅費、および本研究で得られた成果を論文として発表するための費用として研究費を持ちいる予定である。
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